頂を目指す二ノ姫U

□都大会前日の嵐
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2人と別れて桜が向かったのは、少し高級感のある喫茶店だった
優雅な雰囲気の店内に入った瞬間目的の人物を見つけて目を細めた
相変わらずの存在感だ
近寄って来た店員に軽く説明して傍まで歩いていく
優雅に紅茶を楽しんでいた人物は、やって来た桜に気付いてその端正な表情を緩めた





「よう。久しぶりだな桜」





『そうね、景吾』





桜はフワッと笑って応えるとその人物の正面に座った


跡部景吾
氷帝学園生徒会長にして男子テニス部部長
先日ストリートテニス場にて桃城と変則的なダブルスをした若干偉そうな少年である
ちなみに、その時のダブルスのパートナーであった樺地の姿はない


『で、何?いきなり呼びだして
一応明日が都大会だってことは知ってる?』

「そりゃあな。まぁ都大会は氷帝の優勝で決まりだがな」

『それはどうでしょう。今年の青学は強いわよ』


桜は挑発するように顎をツンと上げた


「アーン?珍しいな。桜がそんなこと言うなんてよ
……まあいい。実はこの間、お前の所の桃城とかいう奴に会ってな」


勝手に桜用の紅茶を注文した跡部はそう言って自分の紅茶に口をつけた
桜はへぇ、と跡部の顔を見た


『(やっぱりそのことか…)――それは知らなかったわ
そういえばちょっと前から雰囲気が変わって打球も重くなったけど、何かしたの?』

「俺じゃなくて樺地がな」


余裕の表情の跡部に桜は肩を竦めた


『フーン。ま、貴方のことだから挑発したんでしょ?
それで、私を呼びだした理由は?桃に興味でも湧いたの?』

「まっそんなところだ。あとは宣戦布告だな
手塚にも伝えておけ。決勝まで来れたら完膚なきまでに叩き潰してやるってな」

『それはこっちのセリフってことで。ま、伝えておくわ』


跡部の言いようにその自信はどこから来るんだ、とは言わない
彼の強さはこの2年で嫌というほど思い知ったからだ
マネージャーとして、コーチとして、そしてプレイヤーとして何回も見て来た跡部の実力はやはり圧倒的だった
その強さは疑うまでもない


『都大会までは準レギュラーが主に試合に出るんでしょう?
レギュラーで出るのは誰?亮とか??』

「相変わらずのカンだな、恐れ入るぜ
ま、あとは俺様もな」


桜は運ばれてきた紅茶を飲んで不敵に笑った
相手にとって、不足はない


『そう。何にしても負けないわよ。楽しみにしてるわね』

「お前に氷帝の強さを見せてやるよ」

『あら、こっちこそ』


跡部と桜は口の端を上げて不敵に笑い合った





「…オイ………桜」


唐突に跡部は表情を消して桜を見つめた
その目つきはどこか睨みつけているようでもあり、桜の胸の内を探るようでもあった


「お前………なんかあったか?」

『……なんかって?』

「……………………いや……………なんでもねぇ…………」


問いかけておいて何も言わずに話を切った跡部に桜は訝しげな表情を浮かべた
しかし跡部は先程の表情をさらに打ち消して、いつもの余裕の表情を作っていた
だから桜は何も言わなかった
というよりも、これ以上突っ込んで何かよくない話を引き出す事を恐れたのだ
自分は隠し事も、虚偽も多すぎる身だ
不用意な発言は控えなくてはならない



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