頂を目指す二ノ姫U

□都大会開始!
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リョーマは圧倒的な力でポイントをとっていく。そして…



「ゲームセット!!」


「よっしゃ――越前。完全試合(パーフェクトゲーム)達成ー!!!」

「これで青学の4勝0敗だ」


ダブルス2からシングルス2まで相手に1ゲームも与えなかったレギュラーに青学は活気づいた
桜は歓声の中動き出した男に目を向ける


『そして最後にもう一人…』


彼は静かにラケットを持ち、コートへと歩き出した


「ナイスゲームだ。越前」

「どもっス」


すれ違いざまに声をかけてきた手塚を、リョーマは複雑な表情で見つめた


「強いのはわかっていたが想像以上の強さじゃないか!」

「何なんだ今年の青学は!」


騒然とするギャラリーはしかしこの男の登場で静まり返った
生唾を飲む音まで聞こえてきそうである
フェンスに手を置く桜は小さく呟いた


『さあ…最後にしっかり決めてちょうだい』

「い…いよいよ出るぞ…」





「手塚国光…」





ネットに歩み寄った手塚を見て一年トリオも興奮気味である


「部長の公式戦初めて見るね…」

「な、なんか空気が違うよな」

「一瞬にしてコートの周りがシーンとしちゃったよ」

『(リョーマったら難しい顔しちゃって)』


桜は手塚を凝視しているリョーマを見てから穏やかな表情で手塚に目を向けた
その時ちょうど手塚も桜を見ていて、2人は一瞬だけ視線を交えた



『(大丈夫だろうけど、頑張って……)』


「(大丈夫だ。お前がそこにいるから……俺は負けない………)」



手塚は傍目には分からない程度に表情を緩めて桜を見て、そして静かに試合開始を待った



「《ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ!!青学サービスプレイ!!》」



手塚は冷静にサーブを放った
それは相手に反応もさせずにスペースのないセンターに吸い込まれていった


「おお――っいきなりノータッチエース!!」


「《15−0…》」


「この前の桜と同じ事してるね」

『………そうみたいね』


不二が面白そうに言う通り、地区予選前の試合で桜がしたことを手塚はしていた


『(……実は結構負けず嫌いよね。しかも負けっぱなしは許さないってこと…)』


手塚は周りの歓声にも表情を緩めず、そしてまたサーブを放つ


「今度は逆サイドへ!!」

「よしっナイッサー!!」


大石の表情にも絶対的な安心と余裕が見え、穏やかな表情で見ている
桜もボールを分析しつつリラックスしていた


『フラットサーブに少しスライス回転をかけてるわね
そのおかげで左手からの外へ逃げていくボールが打てる
しかもそれをコーナーギリギリにあのスピードで決められちゃ、取れないでしょうね』

「桜はどう?」

『…さぁ。やってみないとわからないわね』


大石の問いに曖昧に笑って返した
本当にもう予測だけじゃ分からないところまで来ているのだ


『(私がみんなに追い越されるのは…時間の問題ね)』


一抹の寂しさを覚えるものの、その表情には嬉しさも滲んでいた



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