頂を目指す二ノ姫U
□大石と菊丸のダブルス
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時間の関係上、青学VS聖ルドルフの試合はダブルスを同時に行っていた
そのうち、黄金ペアと誉れ高い菊丸と大石は、赤澤、金田ペアに苦戦を強いられていた。主に菊丸だ
「(しつこいなぁ。また俺の嫌いなコースだよ。そんなら…)ほいよっ」
「―――なる程。苦手コースをあえて周りこんで得意コースでショットする…か
(その敏捷さには敬服するぜ!)」
赤澤の打ったボールに反応する菊丸
しかしボールを見つめるその表情は優れない
『(英二の様子がおかしい?)』
「出た――!!ダイビングボレー!!」
「アウト!!」
菊丸の打った球はラインより外に出てしまった
桜は菊丸のミスに眉間にしわを寄せた
『(何かがおかしいわね
英二の集中力が切れかかってる?
一体どういうこと…)
!!』
「んふ」
桜の視界の隅に移ったのは観月で、桜を怪しげな目で見ていた
桜はムッとして挑発的な笑みを浮かべる
『(そういうこと…なめないでよね)』
しかし桜の思いも空しく試合は4−3と押され気味だ
「そんなぁ…大石副部長と菊丸先輩の青学ゴールデンペアが苦戦するなんて…」
「…………」
「英二の集中力が落ちてるね」
心配そうな不二に桜も頷いた
『ええ。イージーミスが多いわ』
「それだけあの赤澤くんのプレッシャーが凄いということ」
「いや…多分それだけじゃない」
『貞治もそう思う?』
「ああ」
やって来た乾に桜は試合から視線を外さずに口を開いた
『赤澤くんはシングルスとしては凄いけどダブルスはまだ不慣れよ
あえて使ってきたのには他にも理由があるのよ
(それにしても……なんだか目が痛いわ)』
桜は霞む視界に目元を擦った
そしてハッと顔を上げる
『(…まさか……)ねぇリョーマ。あの赤澤くんの打つ球、どう見える?』
「……どう見えるって
ボールが5つ6つ位に見えるんスけど」
「!?」
『やっぱりね』
桜は赤澤の打つボールを凝視した
乾も気づいてコートにかじりつく
「(あれか!?)」
『赤澤くんはバックハンドストロークの際にラケットのスイートスポットを外し、先端で打つ妙なクセを持ってる』
「あの打球には無数の微妙なブレが生じているはず!!
常人では決して判別出来ない程の…
しかし動体視力の良すぎる菊丸は無意識に全てのボールを目で追ってしまう」
乾の説明の間に菊丸は打ち返したボールをまたもネットに引っかけてしまった
桜はリョーマを見下す
『そういうことよね』
「目が痛い。疲れるっス」
『私でも目が痛いもの。リョーマや、英二ならなおさらね』
菊丸は膝に手を置いて荒い息を吐いていた
「このムシ暑さの中、見えすぎる動体視力が逆に集中力、体力とも奪ってしまった」
『シングルスの赤澤くんをあえてダブルスに…英二にあてたのはこういう理由があったのね』
コート内のベンチに座っていた観月は得意げに笑っていた
「んふっ今さら気づいても遅いよ神崎さん、乾君
菊丸君はこっちのペースに落ちた
人間の集中力なんて時間が限られてる
例外なんて…」
しかし観月の予想は裏切られることになる
『(まぁ、意地の悪い顔)』
桜はにた〜〜〜っと笑う乾とリョーマに苦笑して、そしてラケットを回し始めた菊丸を見た
「!?」
「菊丸の精神力はまだ死んじゃいない」
『英二はこれからよ』
桜は菊丸に視線を送り続けた
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