頂を目指す二ノ姫U
□新たな武器
2ページ/4ページ
「前衛がセンターラインまたいでかがんでるぞ!?」
「えぇっ!?」
周囲が驚くのも無理はない
菊丸はネットのすぐ前で腰を大きく落として構えており、大石と大きく距離が開いていた
しかも大石と菊丸は一直線に並んでいて、両サイドがガラ空きだ
『(リョーマと桃のダブルスじゃあるまいし、普通しないわよね)』
桜は結構失礼なことを考えながら成り行きを見守った
彼らがとちらなければ、これは2人の大きな武器になってくれるはずだ
大石のサーブでゲームは始まった
「行ったぁ!!」
「(奇襲か!?いや何かある!)」
金田はボールを打ち返そうとすると、菊丸がその方向へ動いた
「(まずい、逆へ…)」
慌てて菊丸とは反対に打ち返すが、そこにはコートにラケットのヘッドを擦らせる大石がいた
「大石!?」
「でた―――っムーンボレー!!」
「《15−0》」
「くっ」
「まさか今の陣形は…」
目を見開いた観月の声と、桜の小さな呟きが重なった
「『オーストラリアンフォーメーション!!』」
このフォーメーションを提案したのは桜と乾だ
桜は練習の時の光景を思い出した
『違うわ英二。そうじゃなくて』
「桜ー難しーよオーストなんとかって」
「「オーストラリアンフォーメーション」」
大石と乾の声が重なった
「高度な変形フォーメーションはペアの息が合わないと何の意味も持たないからね」
『秀だけじゃなくて英二もお互いの動きを読まないとだめよ
でもしっかりマスターすれば敵を混乱させることが出来るわ』
「ん―――…」
菊丸は曖昧に笑った
「――大丈夫っしょ。なんとかなるって」
「おいおい…」
『英二……』
桜は呆れたよう乾と大石の顔を思い出してフフッと笑った
『本番に強いわね、英二も秀一郎も』
.