頂を目指す二ノ姫U

□彼女の言葉
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「ベンチコーチは登録された選手…または監督の先生1名
もしくは監督と同等の権限を持つわがテニス部のマネージャー兼コーチに限られているからね」

「その神崎さんも監督に譲ってしまっていますしね。本当に残念です
ん―――…乾君もせめてレギュラー落ちしてなければコート内で僕と競えたのに…ふふっ」


そう笑う観月に桜は困惑の表情を作り、それを見た乾は表情を変えずに淡々と言った


「何を?アドバイス?…別にないケド。なぁ?」

『……そうね。アドバイスは試合前にしてしまうし…
試合中に何か言わなきゃいけないことってそうないし』


その返答に目を眇めた観月は審判に注意され踵を返した
最後に桜と乾に顔だけを向けて不敵に笑う


「んふっ負け惜しみを言っていられるのも…今のうちですよ!」

『(負け惜しみ…ね)』


去っていく観月の後ろ姿を見ながら桜は口元に手を当てて意地悪く目尻を下げた



「《プレイ!!》」



木更津の打ってきた球を受けて桃城はしかめ面をした


「(あいかわらずコイツら、オレ達の苦手コースを突いてきやがる)」

「お前ら本当しぶといだーね!だけどこーゆう試合……



大好きだ――ね!!なあ淳!!」



「くすくす楽しいや」

『(余裕ね。それにコントロールも的確
着実に攻めてきてる
桃のダンクスマッシュを封じられてるのが大きい…か
でもね…観月くん)』


桃城のダンクを封じ、海堂のスネイクを研究して余裕な表情を崩さない観月
彼に桜は心の中で語りかけた



ドッ




「(え?)」


それと同時に桃城のショットが相手コートを抉った
今までとはスピードもキレもまるで違うショットに観月も目を見開く



「《デュースアゲイン!!》」



リョーマもニヤッと桃城のショットを見て不敵に笑う


『(…あの子たちはまだまだ未知数だもの
私が言っても言わなくても、まだまだ伸びるわ)』





暴れたらねーな。暴れたんねーよ





桃城は一息つくと海堂の方を見ずに話しかけた


「おい、海堂。お前このまま"アレ"を出さねぇつもりか」

「うるせぇ」


短く返す海堂に桃城はさらに言い募る


「――確かにお前がスネイクのモーションに入るとあいつらとたんに反応しやがる
ありゃ相当練習してきてるって感じだ
返される事考えてビビってんのか?」

「やみくもに出しゃいいってモンじゃねぇだろが。タコ」


すると桃城はラケットを肩にかけて地面に視線を落とした


「………憶えてるか?海堂
桜先輩と初めて試合してボロ負けした時のこと…」

「…………………ああ」


苦い記憶に海堂は顔を顰めた
時間がないからと桃城とダブルスを組ませられ、1対2の試合をした

自分の攻撃が全く決まらずに1ポイントも取れなかったあの時の光景が甦る


「どんな球を打っても絶対返してきた桜先輩があの時言った言葉を俺は忘れねぇ」


そう言って桃城は昔を懐かしむように目を細めた



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