夜空を纏う四ノ姫

□夏祭り
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『(なんでこんなことになってんのかしら)』


桜もとうに散って蝉がうるさく鳴く季節
というか学生なら誰もが嬉しい夏休み
桜は雲雀に連れられて夏祭りにきていた
しかも紺色の布地に蝶が舞っている浴衣を着て、なぜか腕には風紀委員の腕章を付けてだ


『ねぇ恭弥。なんで私この腕章を付けて恭弥と歩いてるのかしら?』

「この前公民館を君がよく一緒にいる奴らが壊したから、その罰だよ」

『……七夕の時かぁ…』


ボンゴレ的町内交流七夕大会が開催され、その時に公民館を山本と獄寺が壊してしまったのだ
その時のことを言っているのだろうか


『……それでなんで………』

「止めなかった桜の責任」

『(理不尽……)』


最近恭弥とよく一緒にいるなぁ、と思いながら桜は仕方なく彼の隣を歩く
こういう時の雲雀は何を言っても聞いてくれない
しかしまだ疑問はある


『あと、なんで浴衣でやるの?
腕章が全く合ってないんだけど
というか動きづらいし』

「浴衣は似合ってるよ」

『(そういう問題じゃないって…)』


雲雀のマイペースさに桜はいい加減溜息が出てきた


「……ここのショバ代は任せたよ」

『ええ』


風紀委員はなぜか屋台を出している人からショバ代として5万円を回収して回っていた
風紀委員の活動費に充てるらしい
その集金に桜も駆り出されているのだ
払えないと問答無用で屋台を壊しにかかるので、桜は仕方なく屋台の主に向き合った


『ということで、申し訳ないですけど払って下さい』

「…しょ、しょうがねーな」


後ろで睨みを利かせている風紀委員の力を借りて代金を払って貰い、桜は視線を雲雀に向けた
雲雀は新たな屋台にショバ代の金額を突きつけていた


「5万」


と同時に聞き慣れた声を聞いた





ヒバリさんー!?





そこにいたのはツナ達だった
チョコバナナの屋台を出している獄寺と山本も慌てて身を乗り出した


「てめ――何しに来やがった!」

「まさか」

「ショバ代って風紀委員に――――!?」

『そうみたいなの』

「そんなーっ!って桜!!

「お!桜じゃねーか」

「なっ!!」


自分の存在に気づいたツナたちに桜は申し訳なさそうに近づいた
というか彼らが屋台を出しているとは初耳だ
朗らかに桜に向かって笑いかける山本とは対照的に、ツナは驚き、獄寺は怒りの表情を露わにした


「な、なんで桜が…」

「てめー何時の間に風紀委員になんてなりやがった!!」


腕章を見た獄寺に吠えられ桜は苦笑する


『なんか、今日一日だけ風紀委員になっちゃった』

「え、なんで?」

『まぁ、色々あって』


理由を言うとまたごちゃごちゃになりそうだったので、桜は曖昧に誤魔化した
困ったように笑ってツナに両手を合わせる


『だから申し訳ないんだけど5万、払ってもらえる?』

「払えないなら屋台をつぶす」


その雲雀の言葉通り、とある屋台が潰されていた


「やっぱり払います!払いますから!!」

「(実際につぶされてる――!!)」

『(凄い状況よね)』


並盛町を牛耳っている風紀委員に桜は呆気にとられるばかりだ
ツナたちは怖々ショバ代を雲雀に渡した


「たしかに」


この短期間に並中風紀委員の実態を知らされたようでどっと疲れる
息をついて桜はツナたちに手を振った


『じゃあ屋台頑張ってね!』

「あ、うん。桜も頑張って!!」


桜は応援を背に雲雀を追った
また屋台から徴収していた雲雀は、思い出したように桜を振り返った


「そういえば、最近ひったくりが多数起きてるらしいから、それも注意しておいて」

『ええ。わかったわ』

「で、見つけたら咬み殺してひったくられた金すべて回収してね」

『(………それも活動費にする気…)』


桜は渇いた笑い声を上げた



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