頂を目指す二ノ姫U

□ツイストスピンショット
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「え?」

「あの不二先輩の弟さん…」

『裕太よ』

「あ、えっと…もともと青学にいたんですか!?」


少し硬い声音で訂正した桜は、怯んだ1年トリオの問いに頷いた


『ええ。入学して半年ぐらい』

「でも青学テニス部には入らなかったよ」

「な、何で?」


大石は真剣な表情で言葉を紡いだ


「きっと比較されたくなかったんだろう
天才と言われる兄貴と…」






















桜はその頃女テニを辞めていて、すでに男テニのマネージャーとして活動していた
だから不二の弟が青学に入学していて、テニス部に入らないことも知っていた
友人にも幾度となく言われていたし、周りも噂を好んでしていたから
彼らはいつも口を揃えて不二弟を入部させないのかを言ってきた
でも、桜はどんなに言われても彼の元へ行って勧誘する事はしなかった
彼にその意思がないのに入部を促すことをしても意味がないからだ

だから裕太と会ったのは偶然だった
いつも兄の名前を出されるたびに苦痛の表情を浮かべる彼と行きあって言葉を交わしたのだ


それから仲が良くなって、話もするようになった
彼が少し遠めのテニススクールに通っていることも勿論聞いていた
たまに部活はオフの時は買い物に付き合ったりもしたし、テニスの指導もした

そんな関係が続いた秋頃、裕太はとうとう転校する事に決めた

それを何となく感じ取った桜は、唐突に裕太にあるお願いをされた
それはテニスプレイヤーであり打倒兄に燃える裕太にしてみれば至極当然の願いだった





「桜さん………俺と試合して下さい」





決意の表情でそう言ってきた裕太に桜は快諾した
結果は6−0と桜の完勝だった


「……やっぱ強いっすね、桜さん
もう選手を辞めて1年経ってるのに手も足も出ませんでした」

『…これでも随分力は落ちたわ。トレーニングでも限界があるから
でもその代り裕太は力を付けてきたわね』

「いえ。俺なんてまだまだです………本当に……」

『裕太。強く……なりたいのね』

「はい。その為に………俺、聖ルドルフに行きます!!」























あの頃から裕太の思いはただ一つ
天才と謳われる兄に勝ち、自分という存在を不二裕太であると認めさせること


「(これが俺の答えだ!!)」

「(あの構えは…………!?)」

『…………っ』


桜と不二が驚愕するなか、裕太は左手を高く上げ、身体を回転させるようにしてボールを打った



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