頂を目指す二ノ姫U

□兄の怒り
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乾はボールをラケットで捉える不二を見て静かに口を開いた


「アイツのデータだけは…





俺でさえ正確に取らせてもらえない





パアァン





軽快な音と共に不二のリターンエースがきれいに決まった
観月は驚愕に目を見開いた


「(バカな……!?あのコースは最も苦手なハズじゃ)」

「今のコースだけど





本当は一番得意なんだ





その後は実に一方的な展開だった
今まで快調にポイントを取っていたのが嘘みたいに、逆にポイントを取られる観月
打った球をことごとく返される


『(そりゃ周助が相手じゃねぇ
しかも…その周助を怒らせたんだもの)』

「(ここも駄目!!ここも駄目!!こ、こんなハズじゃ
すべてアイツの苦手なコースなのに…!?)」


楽しそうにポイントを重ねる不二とは対照的に観月の顔は歪んでいく


「な、なぜ…なぜお前は苦手のコースをことごとく…」

「苦手?得意なコースばかりだけど」

「!
(そんなハズはない。ボクのデータに間違いは…)」


そう考えるが、やはり不二に楽々返されてしまう


「(まさかボクがとったデータがすべて間違ってるとしたら……!?)」


桜は顔色は悪くなっていく観月に剣呑な視線を送る


『周助は弱点を他人に悟られる様なマネはしないわ』

「ああ。勝手に分かったつもりでいただけさ」

『私でもそんなに分からないのに』


桜は苦笑を漏らす
乾は頭をノートで軽く小突き息を吐いた


「信じられるデータが無くなった今、アイツにもう勝ち目はないな」


その時、後ろから大勢の足音がして桜は反射的に振り返った
そこにあったのは白地の水色のジャージ


「うわわぁ――っ来たぁ!大会ナンバーワンシード





 氷帝学園!!





氷帝テニス部を束ねる跡部景吾は、不二を見て満足そうに口角を上げた


「さすがだ不二周助。相変わらずスキがねぇ
よく見とけ樺地!」

「ウス」

「ぶざまだねェアイツ
お前もそう思うだろ?桜」


指にラケットをのせて呆れたように言う長髪の少年、宍戸亮
彼に唐突に名前を呼ばれ、桜は苦笑して近づいた


『厳しいこと言うわね、亮』

「へっ。桜だって思ってんだろ?顔に書いてあるぜ?」

『ノーコメントで』


桜の言いように宍戸はフッと笑った
跡部は尊大な態度で桜と向き合う



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