頂を目指す二ノ姫U

□兄の怒り
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「桜さん」

『裕太…』


荷物を詰めていた桜の元に裕太がやって来た
思いつめたような裕太の表情に桜は腰を上げて首を傾げる


『どうしたの…?』

「あ、あの……オレ………」


言い淀んでいる裕太に、桜は柔らかい笑顔を向けた
この言葉は、最初に自分から言っておきたい





『……強くなったわね、裕太』





「!!」


バッと顔を上げた裕太は桜の笑顔を直視して顔を赤くさせた
それに気づかずに桜はさらに笑みを深くする


『前言ったこと覚えてる?』

「……前?」

『ええ。また試合しましょうねって』

「!!あ……」


それを聞いた裕太は嬉しそうに顔を綻ばせた


「は、はい!!お願いします!!!」


大きな声を上げて返事をした裕太の頭に桜は思わず手を伸ばした


「……!!」


自分よりほんの少しだけ高い身長
兄を越えた身長となった裕太に温かい気持ちになる


『(大きくなったなぁ…)』


最初に見た時はまだまだ子ども子どもしていて、こんな大きくなるなんて思わなかった

"昔"と同じで兄に対しての考え方も変わらない彼
だけど少しずついい方向に向かって行っているのがわかる
しかも穏やかな日常を送っていてくれているのだ

それは兄も、そして"みんな"もそうなのだが


『(このまま、何事も無く成長してほしいわね
…って、なんだかおばあちゃんっていうか、母親みたいね)』


全身茹蛸になっているんじゃないかというほど赤い裕太に構わず、桜は感慨に耽っていた










それを遠くから見ていた手塚と不二
不二は真っ赤になっている裕太を見て色々な感情が複雑に絡み合っていた


「(桜には本当に頭が上がらないよ
裕太のことでいつも世話になってるからね…)」


しかしそれとは別の感情も湧きあがって来る
それを自覚してフッと溜息をついた


「(……裕太もライバルか………)」


そして今の所最大の壁となる彼女の幼馴染みに視線を向けた


「……手塚。眉間のしわ深いよ?」

「…………」


手塚はさらに眉間にしわを刻んだ
そのしわは桜が戻って来るまで刻まれたままで、他の部員を怖がらせていた



→atogaki
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