頂を目指す二ノ姫U
□兄の怒り
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「《ただいまからシングルス2青学不二 聖ルドルフ観月戦、始めます》」
不二は観月と握手するとすぐに手を離し厳しい表情で彼を見ていた
「(んふっおやおやずいぶん怖い顔ですね)いい試合にしましょう」
桜は巻いてもらった包帯を無意識になぞった
余裕な表情の観月を睨みつける
『(…こんなこと思うのも良くないことだとわかってる
…けど……その根性は叩き直さなきゃ…ね、周助)』
「《青学不二 サービスプレイ》」
不二から放たれたサーブに追いつき、観月は薄く笑って言った
「不二周助。キミはたしかに強い…でもボクには勝てない!
なぜなら―――」
「ああっ」
観月の放ったショットに不二は反応しきれなかった
呆気なくポイントを許してしまう
しかし不二は無表情でそれを見ていた
『(大方周助の技、苦手なコース、ラケットのメーカーまで調べて予測し、対策を立てたんでしょうけど……残念)』
桜の目の前で次々とポイントを取られ、不二は追いつめられていた
表面上は
「《ゲーム!ルドルフ観月 5−0!!チェンジコート!!》」
「うそぉっ!!あっという間に5ゲーム取られちゃったよ!?後がない――!!」
「ふ、不二先輩〜〜〜〜っ!!」
「強えぇっ!!なんて無駄のないテニスだ!!」
『(無駄のないテニスは彼のことよ)』
桜は巻かれた包帯に、遠くの土地で練習に励んでいるであろう彼のことを思い出した
あの包帯は今も健在だろうか
不二は不機嫌そうな表情を浮かべ、それでいて尊大な態度の観月に近づいた
「観月。念のために聞いとくけど、負担がかかると知って裕太にツイストスピンショットを教えたのか」
それに対して観月はあざ笑うような視線を不二に寄越した
「――打倒兄に燃えるバカ弟は単純で操り易かったよ」
その答えを聞いた不二は険しい表情でベンチに置いてあったバックから違うラケットを取り出した
「(みじめですね不二周助
ストリングの張りの強さ(テンション)の違うラケットを使って打球の威力や変化を微妙に変えるつもりか
でも残念……その金色のラケット。ストリングの強さ58P。すべて調査済みですよ!!)」
「《5−0 ルドルフ観月サーバー》」
「(兄貴…)」
「天才がきいてあきれますね」
優勢の観月は余裕の表情で、裕太は劣勢の兄を心配そうに見ていた
口ではどんなに毛嫌いしていても、兄に対しての感情を持っているのだろう
そんな中、冷静な低い声が空気を変えた
「本当にデータを正確に取れたのかな?」
この試合展開を黙って見ていた乾は静かに言った
周りは反論するがその表情は揺るぎない
観月は不二の最も苦手コースにサーブを打ち不敵な笑みを浮かべている
桜は悲観している青学の中で表情を全く違うものへと変えた
強気で、好戦的で、挑発的な笑みを浮かべる
『やっちゃいなさい、周助』
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