頂を目指す二ノ姫U

□3人のバケモノ
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それから20分後


『秀・英二!時間よ。Dコートで試合開始』

「OK!よお――し大石!勝負勝負!!
負けた方はペナル茶だぞ!!」

「そりゃ大変」


もう元気な菊丸に桜はさすが、と笑った


『(体力回復が早いわね。でもその後の戦い方を考えるのが課題よ
特に秀みたいな緻密で堅実なタイプならなおさら体力配分を考えないと)』


その時、急に周囲がざわめいた


「―――!?み、見ろよアレ…!!」

「まさかもう試合終わったの!?」


タオルを片手に歩いて来る手塚はやりきったような顔をしていた


「(全力でやった様だな…手塚)」

「手塚……」

『お疲れ様。はい、ジャージ』

「すまない」


預かっていたジャージを手渡して、桜は心配そうな大石を一瞥して訊いた


『桃はどうだった?』

「…右足の捻挫は完治した様だな
だが…まだそれを庇っている様では本来の実力は発揮されない!」


そう言って背を向けて歩き出した手塚の背中に、大石は小さく呟いた


「自分にも言ってるんじゃないのか………手塚」

『……そうねぇ』


大石の呟きを聞いた桜は困ったように手を握った


『きっと、そうでしょうね』

「……そうか」


桜の同意に大石は息を吐いて仰向けにコートに倒れ込んでいる桃城を見た
ラケットをグッと握り締める桃城は今何を思っているのか


「桃…」

「他人の心配より自分の試合に専念せい」


スミレは目元を和ませて大石をたしなめた
桜もクリップボードを抱き寄せて口を開く


『桃はやられた倍の力をつけてかえってくる男よ』

「なあ大石…今日の桃に勝てたからって一か月後にはわからんぞ」

『フフッ。明日以降が楽しみね』

「………そうだな」


大石はようやく表情を緩めて頷いた






















『……あら…?』


大石が菊丸と試合を始めた直後
桜は急に肌が粟立つのを感じて二の腕をさすった


「どうした桜。寒いのか?」


様子に気づいて問う手塚に桜はええ、と頷いた


『急に空気が冷たくなった様な……それに空が真っ黒。これは………』


言いきる前に、空がゴロゴロと鳴ったかと思うといきなり雨が降ってきた
試合をしていたみんなは中断し、空を見上げた
隙間なく真っ黒い雲に覆われた空から大粒の雨が降って来ている
その勢いは徐々に強くなってきていた


『これじゃダメね…』


桜は辺りに散らばっているボールを拾い始めた


「終了じゃ。引き上げろ――――っ!!」


スミレの号令が響き渡った



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