頂を目指す二ノ姫U

□3人のバケモノ
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「1年はネットとボールを急いでかたせ!」

「は、はいっ!!」

「まいったなこりゃ」

「残念無念また来週〜」


試合を始めたばかりの菊丸と大石は名残惜しそうにコートから離れた
しかし、まだコートに残っている者たちがいた




ドッ




「え!?」

「あの2人まだやってる!!」

『(周助…リョーマ)』


雨が体を冷やす中、楽しそうにリョーマと不二は打ち合っていた
桜はそんな2人に動きを止める


『決着つけるつもりね』

「まさか逃げないよね?」

「この程度の雨ならまだ出来るよ」


リョーマはベースラインに下がってサーブを打つ構えだ
しかもラケットを右手に持っている


「(ツイストサーブだね)」

「40−30」


やる気になっている所を悪いが、明日が本番
ここで風邪などひいてもらっては困るので止めようと桜は口を開きかけた
しかしそれより先にスミレの怒号が響き渡った





コラ〜ッいつまでやっとんじゃ!!

バカモンが!!






驚いたリョーマは高くトスしたボールをサーブしそこなった


「お前達カン違いしておるぞ。これは練習じゃー
そんなにやりたきゃ同じ部内いつだって出来るじゃろ」


しかし闘志むき出しの2人にスミレは嘆息した
桜も困った表情で諭すように言う


『本番は明日の都大会後半戦でしょ?』


しばらく逡巡した不二はリョーマに言った


「残念だけど、この勝負おあずけだね」

「ズルいっスよ。自分が4−3で勝ってるからってこれからなのに…」

うるさい。つべこべ言わずにあがらんか!!桜に風邪引かせたいのか!!

「いででで…わかった!わかったっス!!」


頬を抓まれたリョーマは声を張り上げた
不二はその様子を見て怖い笑みを浮かべた


「(どんなに突き放してもあっという間に追いついてくる
こんなスリル感滅多に味わえないよ)」


雨が一向に止む気配のない中、手塚は身体に当たる雨もなんのその、佇んでいた不二に近づいた


「ねぇ手塚…越前と試合した時キミもこうだった?」

「知ってたのか?」

「うん!なんとなく」


そう言った不二と黙り込んだ手塚の頭を、桜はクリップボードで華麗にはたいた
ちなみに紙はもちろん抜き取り済みである


『こら!上がりなさいってスミレちゃんの言葉聞いてなかったの!?』

「桜こそ、傘もささないで来ちゃだめでしょ」

「……その前に頭を叩くな」


低い声の手塚を無視して桜は2人の腕を掴んだ


『汗かいてたのに雨なんかにうたれて!!身体を急激に冷やしちゃだめよ
さっさと戻る!!』

「………」

「うん。分かってるよ。でも桜こそ身体冷やしちゃだめだよ」


軽く笑う不二に桜は溜息をついた
その様子を見て手塚は密かに心の中で安堵の息を吐いていた


「(……朝より顔色が良くなったな。少し吹っ切れたか…)」


その時の緩んだ表情を乾と不二に見られていたことを手塚は知らない


「(……やはり手塚のデータを取るには桜が一番だな)」





そして都大会後半戦
その幕が切って落とされる






→atogaki
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