頂を目指す二ノ姫U

□3人のバケモノ
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トォォン



「また『羆落とし』だ!!」


「ゲーム不二!!2−1」



荒い息を吐くリョーマは不二をある意味尊敬のまなざしで見ていた


「(この人…強い!というより…うまい!!
桜先輩のテニスに近いし…)」


リョーマの視線に気づいた不二はニコッと笑った


「ふ―――やっぱり君は油断出来ないや
裕太や海堂…乾までやられる訳だね
一瞬の気の抜きさえ君の前では見せられない
あっという間に命取りになりそうだよ
(――でも、僕に勝つのはまだ早いよ)」

『(……まだ勝たせない……か)』


不二の表情に桜はしょうがないというように息を吐き出した
まだまだリョーマに負けるつもりはないと目が言っている
その闘争心というものが先輩としての意地や、今までの経験からの強み
それならば桜も何も思わないのだが…


『(周助のそれはきっと違うもの……)』


愉しそうな不二に桜は口を引き結んだ

強者の余裕か、またもやリョーマにスマッシュを打たせようとロブを上げる不二
リョーマもそれをスマッシュで打ち返すが羆落としに封じられる


「だめだリョーマ君。スマッシュにこだわって…」

『随分とムキになってるわね。でも』


「「「それでこそ越前!」」」


何回打っても、全て羆落としの前になす術もない
リョーマの表情がだんだん険しく歪んでいく


「にゃろう」




バスッ




とうとうリョーマはスマッシュをネットに引っかけてしまった
らしくないミスに部員はざわめくが不二と桜だけは違った


『(へぇ……すごいことしようとするわね)』

「…………」


不審に思いながらも不二はロブを上げる
それをスマッシュで返すリョーマ


「また返された!!」


周りは羆落としが決まると思っていた
しかし不二は今の手ごたえに疑問を持っていた


「(今のは偶然か。それとも…)」




トオン




「アウト!!」

「え!!」

「アウト!?そんなあの不二が!!」

「カウンターを失敗するなんて…」

『(やるわねぇリョーマ。さすが…)』


桜はペンをクリップボードにコツコツと当ててフッと微笑んだ
ボールはラインを越えて外側に落ちていた
リョーマは無言でベースラインに立ちサーブを放つ
不二は見極めようとリョーマにもう一度ロブを仕掛けた
スマッシュの体勢になったリョーマは不二に笑いながら言う





「もうロブ上げてくれなくていいっスよ!」





それは羆落としを攻略したという事
その言葉を肯定するようにまたアウトの声が響き渡った



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