頂を目指す二ノ姫Ⅱ
□ラッキー千石
2ﾍﾟｰｼﾞ/5ﾍﾟｰｼﾞ
「…それは裏か表か当ててからでしょ」
「当たるよ！んじゃ一応ラフ(裏)で」
回っていたラケットは徐々に大きくぶれ出した
桃城は千石の余裕さに笑った
「たいした自信っスね！
だがサーブ権はもらったぁ――っ！！」
ラケットはゆっくりと地面に倒れていく
その面を見て桃城は歓喜の声を上げた
「よしっスムース(表)だ！！」
しかしラケットは柄の部分がネットに引っ掛かり、それがもとで反転した
「お、おい……」
「ほうら。ラフ(裏)だろ」
得意そうに千石はラケットを拾い上げ片目を瞑った
「でもやっぱりサーブあげるよ！
今日は北東の方角がラッキーだからそっちのコートでリターンもらおっかな」
「さすがラッキー千石。強運の持ち主！！」
『(ふーん。ラッキー千石ね)』
「(おぉ。こっちでは強運なんだ…)」
栞はなぜか感嘆したように目を輝かせた
桜はトスの光景を見て面白そうに口元に笑みを浮かべる
桃城はフッと笑って千石に言う
「Jr.選抜の実力見せてもらいますよラッキー千石さん」
「ど――ぞｖオレの方は君のダンクスマッシュ遠慮したいなあ。死人でたって？」
「出たの？死人」
『出る訳無いでしょ』
ワクワクとした表情で訊いてきた栞に桜は呆れたように肩を落とした
「《これよりシングルス３を始めます！！
ザ・ベスト・オブ・１セットマッチ 青学サービスプレイ》」
桃城はサーブの構えをとりつつ千石を真正面から見つめた
「(サーブ権を譲った事を後悔させてやる)」
ドッ
「でたぁ弾丸サーブ！！」
「おっと強烈っ！！」
と言いながらリターンした千石はあまり堪えていない様子だ
桃城もそれを見てどんどん攻める
「うりゃ」
「(うん……けっこう重い球打つな)」
「へぇ…桃城くん、いい球打つね。千石くんも負けてないけどさ」
『そうね…』
山吹側も驚いている中、桃城は千石を防戦一方に追いこんでいた
そして勢いよく前へ出る
それを見た千石がすかさず左にパッシングで抜こうとした
「うおっ危ねーな危ねーよ！！」
「(こ、こいつ…なんて瞬発力だっ！？)」
『さすが桃。今のに反応するなんて』
「そうだね。桃の身体能力はかなりのものだよ」
「やるじゃん桃城くん」
桜は感心し、不二は笑い、栞は面白そうに彼を見た
.