頂を目指す二ノ姫U

□ジャックナイフ
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「なぬ。ケイレン?(オレってラッキー)
ハッ。いかんいかん。他人の不幸を喜ぶのはいかんぞ」


首を振った千石は桃城としっかり向き合う
栞はしかめっ面で桃城に目を細めた


「あの足じゃサーブは打ててもリターンなんかとうてい無理じゃん」

「(じゃあアイツあの足で今まで……スゲェ気迫)」

「らっ」


桃城の打つサーブを千石は容赦なく返す
桜は思わず手を組んだ


「その姿に敬服するぜ桃城!!」


ケイレンする足を引きずり、桃城は昨日の手塚との試合を思い出していた















「お前は強い!!」


早々に圧倒的な力で勝った手塚は大の字に倒れる桃城に言った
これは手塚から桃城への課題であり、桜からの試練でもあった
これを乗り越えると信じて手塚は言葉をかける


「だが右足を庇って存分にそれを発揮出来ないでいる
捻挫は一か月前には完治しているはずだ






その右足は飾りか…桃城?」























手塚の声が脳裏に響き、桃城の目が据わった
ボールを返そうと強くラケットを両手で握り締める
千石は返す気の桃城に気づき笑った


「上等!!」

「(そーっスね。手塚部長――)」

『右足一本でジャンプした…』

「まさかあれって!」


桃城は左足を使わずにジャンプし、ボールを捉えた
ボールと一緒に踏み込む気かと身構える千石だが様子が変わった


「(まだラケットから離れない…)」


桃城は千石を見据えた





「(俺は強い!!)」





ドシュという音を立てた強烈な返球に桜も千石も目を見開いた


『あれは……』

「ジャックナイフか!?」

「やっぱり…」


重心をかけた前足一本で跳び鋭く放つ、バックハンドの高等技術"ジャックナイフ"
凄まじい技に千石は冷や汗を浮かべながらボールを追った


「(中学生の打つ球じゃないだろう)」

『(なかなか威力のあるジャックナイフだわ…やるわね桃)』


桜も感嘆の表情を浮かべた
栞はうへ〜と複雑そうな表情だ


「すごいスピードボールだ!!」

「あれなら千石がいくら動体視力がよくたって見えないハズだよ」

「(いや見る!!)」


千石はボールに意識を集中させ目を凝らした
そしてしっかりとボールをその目に捉えた


「(よし見えた!!
左足がケイレンしてるというのにこのショット…
こっちも全力でいかせてもらうぞ。オモシロ君!!)」


打ち返そうとした千石だが、ラケットは彼の手を離れふっ飛ばされた



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