頂を目指す二ノ姫U

□怪童とルーキー
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不二は珍しく目を開き驚愕の表情を浮かべた
声音には信じられないという響きがある


「緩急をつけ始めた……バカな」

「うん。彼のテニスは攻撃のみだと思ってたんだけどね〜」

『……亜久津くんが勝利への執着を見せ始めたようね』

「…勝利への執着……か」


桜の言葉を聞いて手塚は目を細めて呟いた
まるで誰かを思いうかべているような眼だ


「とうとう覚醒するか
こうなったら誰も止められないぞ」


千石もそう零すほど亜久津の進化は凄まじかった
亜久津はリョーマにゆさぶりをかけ、容赦なく攻撃を仕掛ける


「(スローボールを織り交ぜるだけで俺様の―――)
スピードボールが生きてくる」


しかしそんな亜久津にもリョーマは怯むことなく、むしろ堂々と向かっていく


「へへっ」

「すごいぞ越前!
亜久津の緩急をつけた攻撃にはやくも順応し始めている!?」

「越前くんの順応性っていうか、対応能力っていうのか…半端ないね」

『確かに…』

「ハッハ――ァ。そーだ来い小僧っ!!」


両者一歩も引かない試合展開に誰もが目を離せない






















「勇敢な男だよ越前は……」


呆然と試合を見ていた河村が言葉を零した
栞はリョーマを目で追いながら小さく笑った


「フツーなら焦って気持ちが弱くなる場面でも絶対に怯まないよね」

「うん。勇敢に戦っているね」


不二もそれに同意した
乾は眼鏡を直しながら静かに言った


「弱い心を持つ事が戦いの場において最もダメな事を越前は本能的に知っている」

「テニスは技術もさる事ながら精神面が大きく左右するスポーツだ」

『ええ。強い心、揺るぎない意志を持つことが勝敗を左右する』


桜は一歩も引かずにラリーを続けるリョーマと亜久津を見て息を吸い込んだ





『この試合…





亜久津くんの意地とリョーマの勇気





より強い方がこの試合を制するわね』





――――――そしていよいよ

      マッチポイントを迎える




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