頂を目指す二ノ姫U
□怪童とルーキー
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「驚いたな越前には…」
「確かにね〜」
唖然とする乾の言葉に隣に立つ栞も頷いた
「いったん左に跳んだハズなのにね…」
「ノーステップで逆に移動できるものか………?」
不二は後ろに気配を感じ、桜を見て声をかけた
「どう思う……桜、手塚?」
「一本足のステップだから可能だったんだ
そうだな、桜」
『ええ。あれはあのステップの本来の使い方と言っても過言じゃないわ』
「フーン…なるほどね〜」
「あの男が越前の眠れる力を引き出したようだな」
『嬉しい?』
「……………」
眉間にしわを寄せる手塚を見て桜はフッと吹き出した
リョーマはまたリターンエースを狙い、今度は亜久津も追いつけなかった
「(さっきより動きが鋭くなった…?)」
胡乱気な視線をリョーマに送る亜久津に栞はほけほけと笑った
「越前くん。最初の頃と動きが全然違うね」
『まだ発展途上なのよ
ま、年齢的なことも含め当然のことだけど』
「だね。ただ……彼は試合の中で進化するタイプなんだね
それは青学メンバーにいえることだけどさ」
『ええ。今のリョーマ……強いわよ』
桜は鋭くボールを打ち返すリョーマにニッと笑う
「きたぁ――っドライブB!!」
「《ゲーム越前1−1!!》」
『…まさに…亜久津くんの出現が
リョーマの中の眠れるサムライの血を呼び醒ましてくれたわね』
「そーだね……これも因果か…それとも……」
隣に立つ桜にしか聞こえない程度の声で栞は呟いた
その表情は喜びと諦めと後悔が混じり合った、酷く複雑な表情だった
桜は脳裏に浮かぶ光景に口を引き結ぶ
『(…因果か……でもそれはリョーマが青学に来た事から…
国光に出逢ったことから始まってるかな…
…それとも…………私かな…)』
リョーマは続いてのゲームも取り、リードしていた
亜久津は険しい顔でリョーマを見据えた
「(俺は誰だ…?俺は亜久津仁だぞ!!
誰も俺には敵いはしない―――
今までどんなヤロウが立ち塞がろうとも叩きのめしてきた
今までも……これからもだ!!)」
亜久津はベンチから帰って来てから明らかにプレーが変わった
桜は目を細めて伴田と亜久津を交互に見る
『(………伴田先生も喰わせ者よね…)』
「桜……」
不二に声をかけられ桜は頷いた
『亜久津くんがまた、盛り返して来てる』
「(言っただろ小僧。叩きのめすってな!!)」
「!」
リョーマは亜久津から繰り出されるボールに目を瞠った
「《ゲーム4−4!!》」
「ああっおしい!追いつかれちまった」
「亜久津先輩――――っ!!!」
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