頂を目指す二ノ姫V

□即席ダブルス
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会場は青学のとった行動に目を剥いていた


「オーストラリアンフォーメーションだと!?」


難度の高い変形フォーメーションをする菊丸と桃城に青学陣も心配を隠せない
桜も思案気に2人を見つめる
これが菊丸と大石のダブルスなら心配する必要はない
練習もしていたし、実戦でも使っているから何の問題もないのだが


『(……今日組んだばかりのダブルスで、出来るのかしら…)』


まさにぶっつけ本番だ
サーブする桃城を跡部は笑って見ていた


「(桃城のヤツ。大石の代わりをやるつもりか)」

「ハッタリだ。迎え撃ってやるぜ!」


打ち返そうとする向日は、菊丸が右に動いたのを見て左に打つ
しかしそこには走り込む桃城がいた


「おっラッキーv当たっちゃったよ」


決めた桃城に歓声がわき、菊丸と桃城はハイタッチをする
それを桜は驚きつつも微笑ましく見ていた
菊丸も桃城も上手い具合に動けている


『(中々いいコンビじゃない)』


汗を拭う向日は苛立ちを表すように舌打ちをした


「悪い侑士。菊丸の動きにつられちまったぜ」

「まかせとき岳人」


そう言う忍足は走り込む桃城の後ろに落とそうとボールを打ちあげた
オーストラリアンフォーメーションの弱点をついたのだ
しかし





完ペキパーペキパーフェクトってね!!





桃城と入れ替わり、後衛に走り込んだ菊丸は後ろ向きで股抜きショットを繰り出す
そのことに忍足は驚いた


「(菊丸が後衛のポジションだと――)」


ネットプレーとアクロバティックが得意な菊丸
彼が後衛についたことで、桜は気付いた


『まさか英二…』

「桃ちんたのんだ!!」

「ういっス!!」


完璧なコンビネーションで桃城はダンクスマッシュを放った
強烈な音がコートに響き、菊丸と桃城は拳を打ちつけニッと笑った


「なんちゅーやっちゃ菊丸」

「ああ。アイツだなポイントは」


忍足と向日の言葉に桜は頬を緩ませて菊丸を見た


『英二が…ゲームメイクを始めてる…それも秀のポジションで桃を動かして…』

「(あえてアクロバティック対決を捨て、桃の跳躍力・高さを活かしてるね)」


不二も菊丸の動きに感心したように見つめた
それは今まで自由奔放に、全てを大石に任せて動くだけだった菊丸の確かな成長だった


「(大石…けっこうサポートって大変なのね―――――
いつも大石が後ろにいたからこそ
安心してアクロバティックプレイが出来てたんだな
それに―――…)」


菊丸は大石が出られないと言った時の桜の言葉を思い出す





『桃のこと、頼んだわよ』





『うん。フォローしてあげてね





きっと英二なら大丈夫よ』






桜の言葉の一つ一つに、信頼が手に取るように分かる
そのことが菊丸にとって嬉しくて仕方がない


「(今回は先輩として…徹底的に桃をサポートしてやんなくっちゃ
そうだよね、桜!)」





ムーンボール!?





「《ゲーム青学 1−4!!》」



菊丸はラケットを振り上げ、ボールは跳んだ向日の頭上を越えていった
それはまるでゴールデンペアを見ているようで、桜はギュッと拳を握り締めた


『(前で好き勝手にプレイするだけだった英二が、成長したわね)』


振り返るとスミレが腕を組んで満足そうに笑っていた
それを見て、桜もにっこりと笑い返した



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