頂を目指す二ノ姫V
□即席ダブルス
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そして試合はゲームカウント4−3
一気に三連取していた
「あのオーストラリアンフォーメーションから
コンビネーションが何故か格段によくなっているぜ
(……桜にとっても予想していなかったこと…
だがその采配は流石だ…)」
跡部はそうして柔らかい表情の桜を横目で見た
一方の忍足と向日は怪訝な顔をしていた
「急造コンビであんなうまくいくハズはないっ」
「どないなってんねん」
その時、桃城が真剣な表情で何かを呟いているのに向日は気がついた
忍足も耳を澄ませる
「…英二先輩がクロスに強打して後衛のバックをついた時
……軽くフェイントを入れ」
「(口だけや。ポーチには出ぇへん)」
「ポーチに出る!!」
しかし桃城は忍足の予想を裏切りポーチに出て来た
「そして返ってきた球を2人の間に…打つ!!」
『……いい攻撃だわ。まるで……』
桜はガッツポーズをする桃城に何かを重ねるように見た
桃城は左腕をまくる
「うしァ。大石先輩の言った通りじゃん
ダブルスを制する36ヶ条………その6。えっと何だったっけ」
「(あ、あれはっ!?)」
向日も桜もそれを見て驚いた
桃城の左腕にはびっしりとダブルスの心得が書き込まれていたのだ
大石が気をつけていたこと、ダブルスで培ったことが書き込まれている
唖然とする向日を見て桃城が不敵に笑った
「何見てんスか?」
そしてとうとう青学が氷帝に追いついた
ゲームカウントは4−4
「……………」
桃城は無言で観客席に向かって拳を突き出した
それを受けて、菊丸も目だけをそっちに向ける
桃城と菊丸の行動に視線を滑らせた跡部は納得した
桜も目を細めて彼を見る
「見ろ!奴らは2人じゃねぇ
3人でダブルスをやっているんだ」
はちまきを巻き、拳を突き出す大石
その右手には包帯が巻かれている
桜は何とも言えない感情に曖昧に笑い、大石に手を挙げた
気付いた大石は朗らかに笑ってそれに答えたので桜は少しだけ肩の力を抜いた
ほどなくして再開された試合の中、氷帝側にざわめきが起こっていた
それを感じ取り桜はその話題の彼に目を向ける
『(…やっぱり、体力が持たなかったようね、岳人。英二と同じ…でも…)』
荒い息を吐いている向日はムーンサルト殺法で掻き乱し
一気に試合を決める、いわゆる速攻型の選手
しかし接戦になればそれは大きすぎる弱点に代わる
『(体力配分を考えた戦略が必要だったのよ…………英二のようにね…)』
「《ゲーム青学 5−4!!》」
「体力が落ちた向日を温存していた菊丸先輩のアクロバティックが上まわりはじめたっ!!」
一気に会場が青学モードになるが、跡部は桜を一瞥した後口角を上げた
「フン…調子づきやがって
しかし氷帝一のくせ者がこんな試合展開満足する訳ねぇだろ
忍足は…ゲームを知っている
最も、桜は気付いてるだろうがな」
跡部の言うように桜は雰囲気の変わった忍足に眉間にしわを寄せ、口元に手を当てた
『(あの侑士が、このまますんなり勝たせてくれるわけないわよね
でも…くせ者は青学にもいるわ
なんにしても次のポイントが流れを変える―――)』
忍足は静かに、着々と攻め始めていた
しかし鋭く、深い球を全て桃城が拾っていく
その様子に跡部は心底面白そうにしていた
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