頂を目指す二ノ姫V

□即席ダブルス
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「桜。今回はお前さんがベンチコーチに行きな」


突然後ろから言われて桜は驚いた
振り向くとスミレが神妙な顔をして桜を見ていた


「この氷帝戦は大事な試合だ
お前さんがベンチにいれば少なからずこいつらのモチベーションは上がる
相手も上げることになるかも知れんが、それでも桜が適任じゃろ」

『でも、相手は榊先生で…』


するとスミレはニヤッと笑って手を振った


「なあに、後ろでプレッシャーでもかけてるよ
さぁ桜。行ってこい」

『…………はい』


もしかするとスミレは知っているのかもしれない
自分が榊に電話をかけて、宍戸に少しでも有利に働くようにした事を
だからわざとそんなことを言っているのだろうと勘ぐってしまう
だが、大事な氷帝戦を間近で見たいと思っていたのも事実
桜はスミレに感謝しつつ、コートに入りベンチに座った


「……おい。ベンチコーチ」

「ああ。見抜く者……いや………脚本家だ」

「神崎桜…」


ざわざわと騒がしくなる観衆
その口の端に上るのは桜の名前
もうだいぶお決まりとなり慣れたことだが煩わしい事には変わりはない
背中に無遠慮に突き刺さる視線が少し癇に障る


『(はやく始まってくれないかしら)』


その時、桜の名前でざわついていた氷帝応援団の声がある言葉で揃ってきていた
始まるのは氷帝名物


「いけいけ氷帝っ」

「やれやれ氷帝!!」

「氷帝っ氷帝!!」

「氷帝氷帝!!」


コートに入って行った菊丸と桃城は、その異様な雰囲気に顔を顰めた
周りをぐるっと囲んでのその氷帝コールが2人に浴びせられる
威圧感が半端ない
そしてとうとう彼らもコートへと入ってきた





勝つんは氷帝!





「「「「「勝つのは氷帝っ!!」」」」」





負けるの青学!





「「「「「負けるの青学っ!!」」」」」





「「「「「氷帝!!」」」」」





「「「「「氷帝!!」」」」」





「「「「「氷帝!!」」」」」





容赦のない氷帝コールが響き渡る中現れたのは忍足侑士と向日岳人ペア
桜は視界の端に動く者に気づいて顔を向けた


『(あら…)』


榊が立ち上がって桜を見ていた
桜もふわりと立ち上がって榊と対峙する


「…先日はなかなか中学生らしからぬ電話をありがとう」

『……いえ。このような子どもの戯言を聞いて下さって光栄です』


嫌みの応酬のような言葉
榊は全く表情を変えず、桜はにこやかに笑ってそれを口にした
もうここでは戦いが始まっている
桜はスミレの代わりにその役目を勤めていた


「では、よろしく頼む」

『こちらこそ』


互いに軽くお辞儀をして桜はベンチへと腰を戻した
足を組んでフゥと息を吐く


『(それにしても、今年も関東までレギュラーを温存してくるなんて…さすが)』


桜はちらっと榊を横目で見た



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