頂を目指す二ノ姫V

□不器用なダブルス
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「《ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 氷帝 宍戸・鳳ペアサービスプレイ!!》」



「海堂。宍戸のライジングには注意だ!
深い打球でベースライン上に足止めされるぞ」

「…………」


乾はそう海堂に忠告するが、それが意味のないものとなる予想外の事が起きた


「(さあ長太郎…ド肝を抜いてやれ
それ一本で正レギュラーを勝ち獲った―――――)」

『(………長太郎の……アレがくる……)』





一…球…入…魂!!





気付いた時には乾の足元にサーブが放たれていた
凄まじい速さでコートに叩きつけられたサーブに乾は思わず冷や汗を流した


『(…また速さが上がった?)』


次いで海堂も取れず、ポイントを奪われてしまう


「あの2人が触れる事すら出来ないなんてな」

『……でも…』


「《ダブルフォールト!!》」



鳳はサーブをネットに引っかけてしまった


「おっといけねっ。すみません宍戸先輩」

「コントロールは相変わらずだな…」

「でも今日調子いいっすよ」


そう言って放ったサーブは海堂を身動き一つさせずに決まった
跡部はそれを見て不敵に口を吊り上げる


「アレは樺地…お前くらいしか返せねーよな
おそらく今大会最速であろう鳳の必殺サーブ…」





スカッドサーブ!!





『(1ゲーム取られちゃったか
まあ長太郎のアレは私も取るのがきつそうだし…)』

「サーブだけ!サーブだけ!」


氷帝軍団は活気づき、大きすぎる声援を送っていた
しかし乾は何てことないように言う


「あんなサーブを決められちゃ今のゲームは仕方がないな!
海堂。今度は俺達」

仕方がない?何言ってんスか先輩!」


乾の言葉を遮り、海堂は前を見据えた
立っている場所は後衛でもないのにベースライン


「俺は引く気はねぇスよ!
まずは…奴等をだまらせるぜ」

『あれをお見舞いする気ね、薫』


身体を左右に揺らす海堂に桜は顎に指を添えた


「何のつもりだ。前衛があの位置までさがってる!?」


海堂を見て驚きを隠せないギャラリー
乾は海堂を見て逡巡するとサーブを放った


「でたぁ――高速サーブ!!」

「(たしかに速いが俺はこの3週間
長太郎の200q/h近いサーブを毎日の様にくらってたんだ…)
止まって見えるぜっ!!」


その言葉通り難なく返す宍戸
しかし乾の後ろには海堂が走り込んでいた
海堂は返ってきたボールを見据え、大きく腕を振り抜くように動かす





ブーメランスネイク!!





ボールはポールの脇を通り、ダブルスコートに落ちていった
桜は不満そうな海堂に苦笑を浮かべる


『(シングルスコートに入らなかったものね)』

「(これ程のポール回しを打つ2年がいるとは)」


跡部は思わず感嘆して目を見開く



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