頂を目指す二ノ姫V

□不器用なダブルス
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「腕全体を使って振り抜けるようになってきたな。海堂…
余分な力もない。いい感じだ」

「フン」


乾の言葉に海堂は鼻を鳴らしただけだった
海堂はまだ満足などしていない

完璧なブーメランスネイク

シングルスコートに返すことが出来て初めてこの技は完成する
そのためにダブルスをすることを決めたのだから

海堂の思いを知っている乾は口を吊り上げた


「(飛ばしてるな、海堂
なら俺も前半は慎重に行こうかと思ってたが、攻めさせてもらうよ)」

「……!?」

『リストバンドを外した?』


乾の行動に驚く桜は近づいてきた乾に首を傾げる


「ちょっとここに置いておくよ」


そう言って乾はリストバンドを地面に投げた
すると



ドス



『!ドス?』

「ええ―――っ!?ドスってまさかあのリストバンド」

「う、うん。鉛の板が入ってるよ!!」


乾はボールを上げ、思い切りラケットを振り下ろした



「《30−0》」



瞬く間にコートにボールが叩きつけられた
宍戸と鳳は、鳳のサーブとあまり遜色のないそれに目を瞠った


「は、速ぇ―――っ
乾先輩サーブの威力が上がった!負けてねぇ!!」

「超高速サーブだ!!」

「凄いな乾…あれが特訓メニューの成果
手塚との試合の時には見せず温存してたみたいだね」

「そのようだな…………ところで…」


不二に返した手塚はいつもより更に表情を固くした
不思議に思う不二を促してベンチに座る桜の後頭部を注視する
大石もつられて彼女に視線を向けた


「………機嫌が悪そうに見えないか?」

「……やっぱり君もそう思う?」

「まさか乾……
あのリストバンドのことも言ってなかったんじゃ…」


3人の危惧通り、桜はリストバンドのことを知らされていなかった
苛立ちからか桜は指で腕を叩き、ジッと乾に視線を送り続ける


『(……どうして貞治は一言言っておかないのかしら…)』


なまじ自分で管理できるからだろうが、記録等を取っている桜の事も考えてほしい
そんな桜の様子に気づいているのか分からない乾を、海堂はボールを手にとって見た


「先輩…」

「おう海堂…奴らを黙らせられたかな?」





ナイスサーブ





海堂はそう言い、ボールを乾に投げた

























その後、鳳のスカッドサーブと乾の超高速サーブ
その応酬にどちらも一歩も引かない攻防が繰り広げられていた
桜は汗が滲む髪をかき上げ目を細める


『(……貞治のサーブの方が長太郎のサーブより…
やっぱりちょっと遅いわね……これが危ないかな…)』


氷帝側では乾のサーブの速さを計っていた


「速度は?」

「192q/hだってよ!」

「ホンマかいな
大会ナンバー1やと思てた鳳とあんま変わらへんやん」

「くそくそ青学め」


跡部は周囲を見回した
若干人数が足りないことに気づく


「ところでジローはどこへ行った?」

「あの野郎またどっかで寝てんじゃねーのか!?
いつもそうだぜっ」

「桜がいるんやから起きてそうやけど」

「どうせ寝てて知らねえんだろ
さがしてこい樺地」

「ウス…」




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