頂を目指す二ノ姫V
□不器用なダブルス
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コートでは宍戸が険しい表情をしていた
乾のサーブに目が据わっている
「バカげたサーブ打ちやがるぜ!」
「いいや。スピードなら俺の方が全然上っスよ」
そう言って鳳は息をつき前を向いた
その言葉の端々に自らの武器の自信のほどが伺える
「とにかく俺は相手コートに返すんで後、お願いします!」
「たのむぜ長太郎!
(たしかにスピードサーブを打つお前なら―
奴の高速サーブを当てる位なら出来るだろう)」
その言葉通り鳳は乾のサーブをなんとか当てた
そして捕球態勢の乾を前に、宍戸は目を見開いた
「(充分だ!!返してさえくれれば――――
俺が攻めに変えてやるよ!)」
「!」
恐るべきスピードでボールに追いつき、宍戸は安定した体勢でボールを捉えた
「どらぁ」
「《40−15!!》」
『(……速い…)』
思わず桜はその速さに目を瞬かせた
まるで瞬間移動したような速さ
しかも重心が全くブレていない
あれなら彼の得意技であるライジングもさらに強力な武器になるだろう
『(これがあの特訓の成果か……)』
速く威力のある鳳のスカッドサーブを素手でとる宍戸の特訓
あれはカウンターでのライジングショットを完璧な体勢でとるためのもの
最初の一歩を飛躍的に速くするための、反応時間を極限まで高める効果があったのだ
元々足には自信があった宍戸の、宍戸だけのテニススタイル
跡部もそのテニスと努力を認めて不敵に笑った
「お前ら2人のダブルスに勝っちまっただけの事はあるな」
そう言われた忍足は横目で跡部を見て、向日は声を上げた
「ぶっ。宍戸の野郎に油断してただけだぜっ!!」
そう言う向日に、跡部は視線を逸らさずにただ2人を見ていた
そして口角を上げ、鼻で笑った
「油断?だから負けんだよ!バーカ」
「《ゲーム2−0 氷帝リード!!》」
「奴等には油断なんか微塵もない」
そう断言した跡部は真剣な表情で話し合う宍戸と鳳にフン、と笑った
向日は押し黙り、ブスッと目を逸らした
跡部はベンチに座る桜を一瞥する
「そんなんじゃ桜に笑われるぜ、お前ら」
桜もテニスで油断をしない
いつでも真剣に、真面目に、相手を見据える
それが彼女の強さの一つでもある
その瞳に魅せられたのはいつからだったか
「(テニスの試合の時だけ、桜の目に自分だけが映る
それがあいつとテニスをする理由になってた
また試合がしてぇな)」
跡部はそう心の中で呟いた
大石は氷帝のダブルス1を見て静かに言う
「どんな不利な状況でも
一発で攻めに転じる事が出来る究極のカウンターを持つ宍戸
長身で高さがあり一撃必殺のスカッドサーブを持つ鳳
強いぞ…理想的なダブルスコンビだろう」
『そうねぇ(しかも…)』
大石の言葉に同意し、乾と海堂を翻弄していく2人に口を引き結ぶ
『(それ以上に亮と長太郎には強い信頼関係がある……)』
それはあの特訓により培われた、絶対的な絆
ダブルスにおいて最も大事なものだ
大石が言うとおりこのダブルスは強い
対して乾と海堂は
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