夜空を纏う四ノ姫2

□選ばれる役者
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「沢田が持ってるやつだな」

「そーだぞ
そして守護者となる部下達は
大空を染めあげる天候と時刻になぞらえられたんだ」





すべてを洗い流す恵みの村雨
「雨のリング」



荒々しく吹きあれる疾風
「嵐のリング」



なにものにもとらわれず我が道をいく浮雲
「雲のリング」



明るく大空を照らす日輪
「晴のリング」



実態のつかめぬ幻影
「霧のリング」



激しい一撃を秘めた雷電
「雷のリング」



総てを包み込む優美な夜天
「夜のリング」





『この「夜のリング」が特別でね』

「あ、天候じゃない…」


呟いたツナに桜は頷く
宍戸は怪訝な表情で首を捻った


「んで、その夜のリングってのは?」

「初代ファミリーにしか存在しない、最強の守護者が持っていたリングだぞ
夜の守護者はボスを護り、ファミリーを護り、ボスに次ぐ権限を持っていたとされている
だから大空に近く、そして大空を休ませるという意味合いから天候じゃなく"夜"とされているんだ」

「初代ファミリーにしかいなかったの?」

『ええ』


桜は考え込むように腕を組んだ
どこか遠い所を見るように目を細める


『2代目からは相応しい人間がいなかったの
だからそのリングは厳重に保管されているそうよ』

「…へぇ。じゃあ今回もそうなのか?」


宍戸がゆっくりと、射抜くような視線をリボーンに送る
リボーンはボルサリーノを少し下げて目を剣呑に光らせた


「…どうだろうな」


どこか含みを持たせる言葉の響きに桜は顔を顰め、ツナに向き直った


『まぁ、夜のリングはいいとして、今持ってるリングだけじゃまだ…』

「ちょっ桜ストーップ!!」


桜の言を慌てた様子のツナが遮った
首にかけてあるチェーンを引っ張って主張する


「とにかくオレはいらないから!!」

「なんでだよ。カッコいいじゃねーか」

「なんで宍戸さんいきなり天然発言ー!!」


朗らかに笑う宍戸に山本の表情が浮かんだツナの耳に、思わぬ援軍が現れた
彼はリングを差し出して言う


「あの…わりーんだけどさ…
オレも野球やるから指輪はつけねーなー」

「(味方ができた――!!!)」

『(理由が何とも言えないけど…)』


思わず苦笑する桜を尻目に、ツナは現れた味方に勢いづいた
逃すまいとしてまくしたてる


「それに…そんなの持ってたら大変なんだって!!
昨日のロン毛がまた狙ってくるんだよ!?」

「「!!」」

『(……それは言わない方が良かったかもね、ツナにとっては)』


表情が変わった獄寺と山本を見て桜は静かにそう思った
先程まで感極まって浮かれていた獄寺
申し訳なさそうにリングを返そうとしていた山本
2人は一瞬のうちに表情を引き締め、何かを決意するように視線を落としていた

宍戸はその様子に軽く肩を落としている
ツナとしてはあんな目に遭うのは金輪際嫌だと思っている
しかしそれを2人が思っているとは限らない
そのために失敗なのだがツナは気づいていない
そのことに宍戸はある意味憐みの視線をツナに送った
気付かずにさらに続けるツナに心の中で合掌する



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