頂を目指す二ノ姫V

□パワー勝負
1ページ/6ページ




ベンチに背中を預け、桜は深く息を吐いた


『(相手のデータが全く無くそれに対抗するすべは――――
薫を走らせギリギリまでデータを集める無茶な作戦。2人らしい最善の策だったはず)
…だけどさすがにあの状態から挽回出来る程、亮と長太郎は甘くない…か』


横目で榊の前に立つ2人を見て目を細める
菊丸は頬をかいて口を尖らせた


「しっかし乾たち惜しかったなぁ」

「さすが関東常連校。一筋縄ではいかないな」

「ええ。強いっスね」


桃城は大石の言葉を受けて、後のシングルスに出る3人を振り返った


「後は頼みます。先輩達…」










宍戸と鳳は榊の前に立ち生唾を飲み込んだ
榊は低い声で2人の改善点を口にする
それに大きく礼をすると、榊が宍戸の名前を呼んだ


「満足いく試合が出来たか?」

「…いえ」

「ならば次の試合で満足してみせろ」


その言葉は、宍戸をレギュラーとして認めた言葉だった
榊は桜を一瞥し、人差し指と中指を立て2人に向けた


「ご苦労。行ってよし!」























コート整備のため、桜はコートから出て辺りを見回した
喧騒を包み込む静謐な力の外に不穏な気配を感じ目を眇める


『(……虚の気配…でも少しずつ消えていってる
この分なら大丈夫かしらね…)』


すると桜の背後に声がかかった


「桜?」


振り返れば、そこには汗をかく宍戸と鳳がいた
桜は何か言いたげな宍戸を見て身体を向ける


『…お疲れ様。いい試合をありがとう』

「…ああ…桜なんだってな
監督に俺をレギュラーに復帰できるよう言ってくれたのは」

『いいえ。私は榊監督の方針に難癖つけただけよ
最終的にどうにかしたのは亮。貴方よ』


緩やかに笑えば、宍戸は照れたように顔を背けた
頬を掻いてボソボソと言う


「いや。そもそも桜が俺のことを気にかけてくれてたからだ
ありがとな。それを言いたかったんだ
乾たちに勝ってから言うことじゃねーけどよ」

『…いいえ。強くなっていて、驚いたわ。さすがね亮
でも、次はきっと青学が勝つからね』

「…おう。望むところだ」


桜の挑発的な笑顔に、宍戸も不敵に笑った























コートに戻り、シングルス3
河村は靴紐を結び直し、ジャージを脱ぎながら静かに語る


「みんな…ここで負けたらオレ達3年は引退だよ…だけど」


団旗の柄を片手で掴み、河村は力を込めた
桃城は焦って言う


「タカさんっそれ片手じゃ無理っスよ!!」


しかし河村は目を見開き、団旗を持ち上げた





「まだ終わりじゃないさ」





その勇ましい姿に周囲は湧いた



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ