頂を目指す二ノ姫V

□頂上対決
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「おい桜!俺様のテニスをしっかり見とけよ?
今度試合するときの為になぁ」

『…いつ約束したかしら?』

「今だ」


こともなげに言う跡部に桜は肩を落とした
こういうところも相変わらずだ
きっとオフの日に突然家にやって来て試合をするのだろう
これからのことが分かり何とも言えない気分だ



「《それでは氷帝学園VS青春学園 シングルス1の試合を開始します!!
ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 氷帝サービスプレイ!!》」


「お前とは初対決だな」

「バーカ。俺を避けてたんだろ。アーン?」

『(いよいよ…ね)』


柄にもなく高揚する感覚に桜は指を組んだ
待っているのだ
中学テニス界の上位に君臨するこの2人の対決を
それと同時に感じる不安を無視して


いくぜっ!!


跡部のサーブが鋭く手塚へと向かう
それを手塚がいとも簡単に返し、跡部もすかさず打ち返す
息もつかせぬラリーをまず制したのは
強烈な打球で手塚のラケットを吹っ飛ばした跡部だった





俺様の美技に酔いな






「《15−0》」


『相変わらずねぇ。あのセリフも』


そう口では呆れたように言う桜だが、その表情は真剣そのものだ
眼は油断なく跡部を追っている


「どーした手塚よ。スピード落ちたんじゃねーのか?
桜がいるにもかかわらずよ」

「……いいドライブボレーだ」

「(…ククッ)そーかいありがとよ。次いくぜ!!」


また始まったラリーに桜は感嘆のため息をつく
手塚はコーナーギリギリの外へ逃げていく打球を交互に打ち分けている
対する跡部もその揺さ振りをものともせず打ち込んできている


『(景吾は完璧なまでのオールラウンダー
バランスがよく、しかも全てにおいて突出してる。しかも……)』


桜は表情には出さないものの、内心苦いものを噛み潰したような感覚に襲われた
鋭く、奥底までも見透かすかのような跡部の目を見つめる


『(あの相手の弱点を見抜く眼力(インサイト)は侮れないわ。本当厄介な相手)』


すると今度は手塚がドライブボレーを打つ体勢になった
先程のポイントをそっくり返す気らしい。しかし


「!」

『(やっぱり簡単にはいかないか)』


手塚の打ったボールを至近距離のバックハンドで捉えている跡部がいた


「オラよ!」

「ウッソー。あれを返しちまった!?」

「(おいおいジャックナイフかよ)」


菊丸は手すりを掴み、桃城は瞠目した
桃城のそれよりも完成されたジャックナイフには桜も舌を巻く


『(ジャックナイフだけでも中学生が打つ球じゃないってのに…
あれは凄過ぎだわ)』

「おおおーっ。跡部凄いぞ。手塚が押されてる」


しかし桜は手塚と跡部の動きを見てハッとした
暫し凝視すればそれは確信に代わる


「甘い甘い!!」

「…………」


不二も気付いたようでジッとそれを見ていた


「決めるぜ!!」


しかしそう言った跡部もその違和感にようやく気がついた
手塚の動き、その足元に広がる軌跡に
ギャラリーにもそれは伝わる


「おい見ろ…そう言えば手塚はあの位置から一歩も動いてねぇぞ!!」

「…手塚ゾーンだ」





回転を掛けられた球は全て国光のもとに戻っていく
まるで吸い寄せられるかの如く






桜はそう囁くように口にした




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