頂を目指す二ノ姫V

□手塚の想い、跡部の想い
2ページ/8ページ




桜は長いラリーに眩暈がする心地がした
一球一球が長く、重い
霞みがかる思考の中に不二達の声が入り込んできた


「え?あの跡部はワザと試合時間を延ばしている?何故そんな事を」

「持久戦で手塚の腕を潰す気だ…」


重々しい不二の声は、今の試合を的確に表している
長いラリーの音が耳障りに感じてしまう


「早目に決められないんですか?」

「跡部はそんなに甘い男じゃないよ」

『ええ。国光と同じ全国区よ。しかも抜け目ないわ』

「あせって攻め急げば必ずスキが生じる。奴はそれを見逃さない!」


爆弾を抱えた手塚のラリーに、荒井が語気を荒げた


「汚えヤローだ
ワザと手塚部長の腕に負担かける為に持久戦にしやがって!」

「そーだそーだ。正々堂々と戦え!!」


見当違いなことを言う彼らに桜が溜息をついた
それと同時に、桜の様子に気づいた海堂が言葉を発した


「うるせえ。黙って応援出来ねぇのか」

『そうね。口は慎みなさい』

「真剣勝負とはこういうものだよ」


そして桜はさらに、もう一つあることに気づいていた
本当は気付きたくなかった、跡部の思考と、手塚の想いに


『(景吾ならはこう考える筈

“持久戦が腕に何らかの悪影響を与えるなら長時間のプレイを避ける筈
そのために攻め急がざるを得ない”

それが景吾の狙い
国光の腕を潰すことが本当の目的なんかじゃない
スキが出来た国光を叩くことこそが景吾の狙い…)
国光…』


桜は指を組んで、悲しそうに手塚を見た
彼の真っ直ぐな瞳は悠然と語る


『(そうね…貴方は……きっと…………
逃げることは無いんでしょうね……
貴方は変わらない……いつだって……
みんなのために……部長として………)』

「(そろそろ強引にでも攻めないと致命傷になるぜ
さあ焦って攻めて来いよ手塚!)」


しかし跡部もまた気づいてしまった
静かに自分を見つめる手塚の目に
その覚悟に…


「手塚国光…とんでもない男だな





自分の腕よりも部長として青学の勝利を選んだね





瞠目する大石は、目の前に座る桜の背中を見た
いつも手塚の傍にいて、手塚の表情の変化に気がついて
いつも支えてきた彼女だから
きっと自分を責めて、悲しんで、辛い思いをしているのだ
優しく包み込んでくれる彼女は、こんなにも華奢で、小さいから








「俺達の代では絶対に青学を全国に導いてやろうぜ」





「ラケットは人を傷つける為にあるんじゃない!!」





「手塚君――――キミには青学テニス部の柱になってもらいます」





「桜。お前も全国へ連れていくからな」









真っ直ぐな手塚の言葉が桜と大石を駆け巡る





手塚はあえて持久戦に挑む覚悟だ!






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ