頂を目指す二ノ姫V

□手塚の想い、跡部の想い
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「《ゲーム6−5 青学リード!!》」


「ちっ手塚ぁ―っ!!」


ゲームを決められた跡部は手塚の名を叫んだ
自身が仕向けた事とはいえ、手塚の選んだ行動に歯噛みする


「(バカな…あえて持久戦を挑んできやがるとは)」

「さあ、油断せず行こう」


桜は焦燥感が襲ってくるなか、彼らの試合を心配そうに見つめる
試合開始から1時間半は経過している
最早手塚の肩は限界に近いのではないかと気が気ではない


『(……あと…1ゲーム…)』


手塚は祈るような眼で自分と跡部の試合を見続けている桜を横目で見た
彼女のその表情を晴らしたくて、ラケットを握り直し構えた


「(跡部…悪いが全国へ行かせてもらうぞ!)」

「(何故だ!?キサマの肩はもう限界を超えているハズだ)」


しかし手塚はさらに零式ドロップを打つ
限界など来ていないかのように
限界など始めから無かったかのように
跡部はボールに食らいつきながら冷静に、真っ直ぐ手塚を見据えていた
ほんの少しのスキも見逃さないように


「(奴を見ろ!球を見ろ!全身の毛穴をブチ開けろよ!!)」


跡部の放ったボールを手塚は打ち上げる
それは今まで出さなかった跡部のスマッシュの絶好のチャンスとなる


「『破滅への輪舞曲』くらえっ!!」


そのボールは手塚の手首へと向かっていった


「出たぁ―っ!!跡部部長の2段スマッシュ!!」

「第1のスマッシュで相手のグリップに当てラケットをはたき落とし、第2の…」


しかし桜の目は捉えていた
柄にもなく思わず叫ぶ


『国光。ラケットを落としてない!』

「あの直撃をグリップにくらって放さなかったのか!?」

「な、なんて執念だっ」

「(いいや。グリップにはくらってねえ!!
一瞬でラケットの面に当てやがった)」


跡部は表情を歪めて視線を変えた


「ならばガラ空きの右サイドを狙うまでだっ!!」


しかしそれすらも手塚ゾーンで阻まれる
なぜなら手塚はラケットの面に当てたからだ
桜は指を組んで胸の前に押さえつけた
その視線は試合に釘付けで、一瞬たりとも見逃さない構えだ





あと、一球だ






「(持ち堪えてくれ!!)」






まるで懇願するように手塚はボールを空に放った
しかし





国光!!!





苦痛の表情で肩を右手で掴む手塚がその場に蹲った
声にならない手塚の悲鳴が聞こえた気がした
桜は立ち上がるが、その場に縫い止められたように動けなかった
手塚の性格を知っているからこそ
今ここで彼の領域に入ることは許されない気がしたから





来るな―――っ!!





案の定、駆け寄って来た部員たちに手塚は怒声を上げた
彼は激痛に耐えながら苦しげに息を吐きだし、それでもラケットを掴む


「戻ってろ!…まだ試合は終わってない」


しかし審判に試合が中断された
桜はそれを聞いて手塚に駆け寄る


『国光。ベンチへ…』

「………ああ」


ベンチに座っても何も言わない手塚
彼の前に立つ桜も口を開かなかった
かける言葉が見つからない




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