頂を目指す二ノ姫V

□とっておきの切り札
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1ゲーム先取したリョーマに桜は微笑ましげだ
いつの間に零式を練習していたのか


『(本当に負けず嫌いね〜)』

「しかしラケットヘッドが30cmも下がってたらバレバレだよ
2度目は通用しないな!」

「ちぇっ」


乾の冷静な分析にリョーマは口を尖らせた
しかしその表情は別段落胆したようでもない
むしろ楽しそうだ


『…………あら?』


そして試合が続行されるが、日吉が唐突にフォームを変えた
その不自然なフォームに眉根を寄せる


『(…あの型は……)』

「(いよいよ来たか……)」


ラケットを持つ右手の肘を、若干上に向けるようにひく
そして右足も同じように後ろに引き、左手と左足を前に出す
それは日吉独特のスタイルだった
そのフォームで繰り出されるボールがリョーマのコートに決まった



「《15−0》」


「よっしゃ――っ。出た日吉の演武テニス!!」

『(…演武テニス…か
あれが若が補欠に選ばれるまでになった理由…ね)』


顎に手を添え、桜はフーンと納得したように息をついた
向日と忍足は日吉の様子を真剣な眼差しで見つめる


「日吉の奴。あの独自のフォームに変えて急に伸びてきやがった」

「何でも実家が古武術の道場をやってるらしいわ
アイツにとってあのフォームが自然体らしいで」


「《30−0!!》」


「…にゃろう」


リョーマはさらに点を決められ日吉を見た
桜はそんなリョーマのラケットを持つ手に視線を向ける


『(…さて……いつ替えるのかしらね)』


演武テニスを駆使する日吉は手強い相手だ
不二もそれを感じて口にした


「やるね彼…」

「あいつは来年には間違いなく正レギュラーになる素質を持っていたが…
あのスタイルのデータは無い!
こんなに早く台頭してくるとは…ノーマークだった!!」

『でも何かしらデータはあるでしょう?』


乾がそう零したことに1年トリオは驚くが、桜はそう思えず口を挟んだ
データマンである乾が何の情報も持っていないと言うなどありえない
そしてその通り、乾はプレイスタイルから性格や誕生日、血液型までもベラベラと喋った
よくここまで、と背筋を冷たいものが滑り落ちる。極めつけは


「好きな言葉は『下剋上』…」

「ええ―っ。何でそんな事ま…「下剋上だ…その為にはまずこの1年を」…………」

『(成る程………貞治がデータに加える訳だわ)』


納得する桜はリョーマが動き出したのを見て目を細めた
彼はラケットを左に持ち替えた


「へえ、やるじゃん…」

「あの1年左に持ち替えた!?」

「バカな。ま、まさか左利きっ!?」

「…フン」


日吉は鼻を鳴らし、リョーマを睨みつけるようにして構えた





お前にとっての下剋上はここには無いんだよ





ねえ…下剋上ってさあ
下位の者が上位の者の地位や権力をおかす事じゃなかったっけ?






リョーマも負けず挑発的な目で日吉に言い放った



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