頂を目指す二ノ姫V

□とっておきの切り札
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ゲームカウントは2−1。リョーマのリードである
桜は両者一歩も譲らない攻防に息を詰める


『(…リョーマも若も強くなったわね…)』


一球一球に力強さが手の取るように分かる
青学と氷帝の今後が楽しみになる、そんな試合だ
そしてそれを真田も感じ取っていた


「まさに両校の次世代を担う若獅子対決という感じだな!」


リョーマも日吉も互いにペース配分など考えていない
自分の持てる力を、大技をハイペースに繰り出している


「見ていて気持ちいいな」

「ホントに見えてるんスか?」


柳の言葉に思わず言ってはいけない事を言った赤也の頭に拳骨が落とされたのは言うまでもない
跡部はタオルを頭に被り、その試合を食い入るように見ていた
後輩に心の中で激励を送る


「(何としても勝て日吉―――

俺達はここで終わる訳にはいかない!!)」





チビ助…まだ10ゲームはいける!





フーン。俺20ゲームはいけるけど





減らず口をたたくリョーマに日吉は強烈な打球を繰り出す
それを返すリョーマ
そのやりとりに桜は眉間にしわを寄せた
ボールを追いかける目が忙しなく動いていることに疲れているのと
先程から訴えてくるこの感覚


『(ペースが速過ぎるわ。若は緩急をつけ始めてる
このままでもつとは思えない…)』


しかしリョーマはドライブBを連発する
眼を見開く日吉に怒涛の攻めを見せた
そのテンションの高さに桜たちは気づいた


「そうか越前のヤツずっと補欠で…
皆の試合見ててうっぷんが溜まってたんだな」

「そして…あの手塚戦を見たんだ
いつも以上にテンションが上がってプレイ出来るのもうなずける」

『いいえ。それだけじゃないわ』


桜の言葉を瞠目する不二が引き継いだ


「うん。あれが本来の彼のベストなテンションなのかもしれない

『(だとしたら―――)』


帽子をとったリョーマは好戦的な目を日吉に向けた
そしてその口からは信じられない言葉が出た








あと100ゲームやる?








その言葉は日吉を呆気にとらせるだけの効果を持っていた
それを聞いた桜の口角は知らずに上がっていた


『(………頼もしいわね。リョーマ)』


そして試合は早いものでマッチポイント
手塚は今まで沈黙していたのを全て出し切るようにリョーマに向かって口にしていた


「そうだ越前。その一球で決めてこい」


その時、リョーマのドライブBがきまった



「《ゲームセット!!ウォンバイ越前 ゲームカウント6−4》」



リョーマは日吉に勝った
それはつまり氷帝戦を制したという事
呆然としている氷帝軍団に引き気味のリョーマだがこう口にする


「か、勝ったけど」


その瞬間、歓声の渦に飲み込まれた





「《――以上により、3勝2敗1ノーゲーム 青学の勝利です!!
両チーム共整列して下さい》」





礼っ!





「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」





「……帝」

「氷帝」

「氷帝っ」

「氷帝!」

「氷帝!!」





この後しばらくの間、氷帝コールは続いた



→atogaki
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