頂を目指す二ノ姫V
□とっておきの切り札
1ページ/4ページ
「まさか手塚が負けるとはな」
柳が零した言葉に真田は目を吊り上げて一言言った
「たるんどる」
「よっぽど真田副部長。自分で倒したかったんスね…」
「シィ―ッ」
真田を見てそう言った赤也に、柳は人差し指を立てて口に当てた
真田の耳に入ったらどうなることか
柳はコートに視線を戻して赤也に言う
「あの氷帝の日吉といえば、新人戦でおまえといい勝負してた奴だろ?」
「そーでしたっけ?」
「とぼけやがって…
来年の氷帝軍団を率いるのは間違いなく奴だ!
氷帝の監督、とんでもない切り札を隠してた様だな!」
腕を組んで真田が頷くが、しかし柳は面白そうに口角を上げた
それに気づいて赤也は首を捻る
「どうしたんスか?柳先輩」
「いや。しかし相手はあの桜だぞ」
「………ああ。あの1年生も、桜のとんでもない切り札…かもしれんな」
神妙な顔つきで真田がそう呟いた瞬間
リョーマの相手である日吉若の顔の横をボールが掠めて行った
「!」
「よそ見してていーの?」
「《15−0…》」
リョーマは考え事していた日吉の思考を試合に戻すと、またもやボールをコートに弾ませる
「どんどん行くよ!」
「また出たぁぁツイストサーブ!!」
「(何だと!?)」
突然のことに日吉は対処に遅れ、ラケットはボールに弾かれた
桜は闘志に溢れるリョーマの目を見て薄く笑う
『(キレがさらに増してるわね
しかもその目は何か企んでる)』
「《40−0!!》」
「おおお――っし。また決まった。いけぇー越前!!」
日吉はギリッと唇を噛み締めてリョーマを睨みつけた
しっかりとボールの軌道を見据える
「(やっかいなサーブ打ちやがってチビ助め――だが
返せない球じゃあないんだよ!!)」
すると日吉はリョーマのツイストサブを返した
周りは返されて驚いているが
「…いいや」
「あのツイストサーブは」
「本気じゃねえ!」
「ワザとおチビの奴…」
「ああ」
「返せるレベルで打ちやがった」
『ホント、しょうがない子ね』
大石たちと桜は呆れて笑う
するとリョーマは返ってきたボールをドロップショットで返した
しかもそれは手塚の得意技、「零式」だった
ボールはコートに落ちるとネットに向かって転がった
「(いったい何なんだこの1年は…!)」
「まだまだだね」
目を瞠った赤也はリョーマを見下して声を零した
「やっぱり青学にもいやがったか
とっておきの切り札が!!」
.