頂を目指す二ノ姫V

□彼らと彼女
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『(あの言い方…自分達は絶対負けないってことね
さすが…全国2連覇の王者)』


遠ざかる背中はまさしく王を名乗るに相応しい
桜はフッと笑うと、入れ違いに近づいてくる足音に振り向いた


「もういいのか?」

『ええ。で、貴方たちはどうしたの?』


本来、今負けた中学のマネージャーには会いにくいだろう
なのに彼らはまとまってやってきた
その表情は読めない


「いや、ちょっと桜にお願いがあってな」

『お願い?』

「おお!!桜、跡部と試合に約束しただろ!!」

興奮気味に言う向日に桜は曖昧に笑う


『あれは約束って言えるのかしら?』

「アーン?嫌じゃねーだろ」

『まぁ。いいけど……それで?』

「だからな………俺達もお前を戦いてぇなって思ってさ」

「俺らとテニス。やってくれへんか?」


忍足が目尻を下げてそう言うので、桜はパチと瞬きをした
何を言われるかと思えば


『そんなこと?別にいいわよ』

「おっしゃー!!やったぜ」

「桜とやる機会なんざあんまねーからな」

「せやな」


喜ぶ彼らを見て、桜はなんだか申し訳ない気持ちになった
彼らはもう、このメンバーで大会には臨めない
3年生である跡部達はもう中学の大会には出られない
彼らの夏は、今日、終わったのだ
それは青学が勝ったからだ
しかし青学が負ければ手塚達の夏が終わっていたわけで
後悔はしないのに物悲しくなる
すると忍足が桜の頭に手を置いた


『…なに?』

「いや……ついな………なぁ桜
もう一つお願い聞いてもろてもええか?」

『……私に出来る事ならね』


すると忍足は勿論や、というとニッと笑った


「ほんなら、笑っててや、桜」

『……笑って?』

「そうですよ。桜さんは笑っててください!」

鳳も大きく頷いた
向日はこちらも満面の笑みを浮かべる


「そうだな。桜が笑ってると俺らも嬉しいぜ」

「……貴女は相手校ですが
どうしてかそんなことは抜きにして笑ってて欲しいんです」

「不思議だな。お前は
だがそんなお前だからこそ、俺らはそう思うんだろ」


跡部にも言われて桜はますます分からなくなった
彼らの自分への接し方が
そしてそれに戸惑いつつも嬉しいなんて思ってる自分が


『(…ごめんなさい………ありがとう……そう言うしか、出来ない)』


そしてそれ以上は言えない
言えばそれは彼らを愚弄することのようにも感じるから
だから、こう言うのだ


『いい試合を………ありがとう』


花が咲いたように、優しく笑いながら








関東大会一回戦 終了――















おまけ

「……………」

「…部長…どうしたんですか?」

「…桜が電話で呼び出されたらしいんだ
誰かは知らないけど…」

「あの手塚の様子から察するに、相手は…男だろうな」

「えぇーっ!!」

「…………」

「…だから機嫌が悪いんだね」




→atogaki
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