頂を目指す二ノ姫V

□想いの欠片
1ページ/5ページ




朝の占いというのも中々面白い
そう桜が断言することとなる入院2日目

テレビをつけてみれば朝のニュースの占いのコーナー



“今日は大切な友達や仲間がひっきりなしに会いに来てくれます
それで一日がつぶれそう!でも楽しんで!!
友達の言葉に一日中嬉しい思いをすることになりそうよ!!
ただケーキには気をつけた方がいいかも”



占いなのか、と首を傾げてしまいたくなる内容だ
しかしこの日の桜を如実に表していたりする
というのも、一体どこから聞きつけてきたのか
桜の病室には面会時間開始と共に多くの人が訪れていた





「おっ。俺一番のりかな〜。ラッキー!!」

『あら。千石くんじゃない。久しぶりね……』


最初に訪れたのは山吹中の千石だった
桜は予期せぬ訪問者に目を瞠った


『…というか何で千石君が?』

「いや〜それがさ、青学の女の子が教えてくれたんだ
桜ちゃんが倒れたって
だからお見舞いに来たんだよ!
というか俺のこと名前で呼んでよ!
清純とか、キヨとか!!」

『そうだったの。わざわざありがとう千石くん』

「あれ、スルー?」


千石は困ったように笑ってはい、と桜に紙袋を差し出した
紙袋に書いてある文字を見て桜の口元が若干引き攣るが千石は気付かない


「これ、最近女の子の間で人気の"ラ・ナミモリーヌ"っていうケーキ屋さんのケーキ!
聞いたら今の一押しはフルーツたっぷりのタルトだっていうから買ってきたよ!
それにあとちょこちょこ見繕ってきたから、あとで食べてよ」

『…あ、ありがとう』


千石はうんうん、と笑って冷蔵庫にケーキをしまった
ベッドの脇に置いてある椅子に座り、桜の顔を覗き込む


「具合はどう?」

『ええ。元々検査入院だから体調はもう平気よ
早く退院したいわ』

「そっかぁ。なら良かったよ
それにしても驚いたよ、あの桜ちゃんが入院なんて」

『"あの"ってどういうこと?』


タオルケットをかけ直して桜が問いかけると千石は目尻を下げた


「いやぁ
こないだ会った時も元気そうにしてたからさ
まさかと思ってね
でも顔色も良さそうだし安心したよ
これなら今度デート出来るね」

『約束した覚えは無いけど?』

「ハハ。手厳しいなぁ」


残念そうに笑う千石に桜もクスッと微笑んだ
千石はそれを見て安心したように息をついた


「本当に良かった
なんか桜ちゃんが倒れたって聞いた時からすごく怖くて…さ
部活にも手がつかなかったんだよね」

『フフッ。心配してくれてありがとう
でもそんなこと言って女の子を口説いてるんでしょ?』

「…本当に手厳しいなぁ」


そう零す千石に桜はふんわりと笑う


『山吹は最近どう?』

「うん。亜久津が辞めたのはかなりの痛手だけどね
それでも前より団結力は高まったかな
壇君っていう将来が楽しみな子もいるしね」

『壇君はプレイヤーに転向したんだったかしら』

「うん。そうだよ。なかなか筋がいいと思う」

『千石君がそう言うならそうなんでしょうね』


桜は嬉しそうに頬を染めた
千石はその桜の様子を目を細めて見ている
彼の視線に気づき、桜は首を傾げた


『どうしたの?』

「……うん。なんか桜ちゃんの顔を見てたら安心してさ
癒されてたとこ」

『どう反応すればいいのか分からないんだけど』

「あ〜気にしないでよ。俺もよく分かんないし」


そう言って笑った千石はさて、と呟くと椅子から立ち上がった
顔を上げる桜に手を振る


「それじゃあ桜ちゃん。俺は行くね
部活始まるし、あんまり長居して体調が悪くなったら困るからね」

『ありがとう。部活頑張ってね、キヨ』

「!!うん!!勿論!!頑張っちゃうよ!!」


千石の名前を桜はサラッと呼んだ
そのことに気をよくして、千石は上機嫌で病室を出て行った

桜はぴっちりとドアが閉まると途端にベッドに倒れ込んだ
彼の言動、仕草、どれをとっても


『……似てるわね…………やっぱり………』


ハァ、と重い息を吐いて、腕を瞼の上に乗せる
暗くなった視界に色が浮かび上がっては消えて行く


『……私って…………バカよね………』


小さく、か細い声を零して、桜はそのまま眠りについた




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ