頂を目指す二ノ姫V

□王者と女王
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すると聞こえてくる声に耳を傾けた
興奮したような声は徐々に近づいてくる


「ちょ、急がねーと!!」

「わかってっけど、はえーよ!!」

「うっせー!!もう試合始まってんだぞ!?
終わっちまうじゃねーか」

「こんなすぐにゃ終わらねーって」

「何言ってんだよ!!





あの立海大附属だぞ!!





『!!』


ハッとした時には、話していた少年は桜を追い越して走り去っていた
桜は耳に残る名前に若干足を速める
そして















『………もう…終わったの…』



桜の目の前から歩いてくる一団に、桜は足を止めた
背筋を伸ばし、威厳をもち、堂々と歩く様はまさに王者
威圧感に周りも遠巻きに見つめている
と、桜の存在に彼らも気付いた
まず最初に声を上げたのは丸井だった


「おっ!!あれ桜じゃん!!」


外だというのに周りの喧騒に負けない大声を発し、指をさす彼
その隣の柳生も眼鏡を押し上げ頷いた


「本当ですね」

「なんじゃ。もう退院しとったんか」

「そのようだな
といっても、検査の結果を待たずに退院した確率、100%」


仁王は目を見開き、柳は重々しく口を開いた
ジャッカルは苦笑いを浮かべている


「桜らしいけどよ」

「む。しかし顔色が悪そうだな。たるんどる」

『(あ、やっぱり言われた)』


お決まりの口癖を吐き出した真田に桜も苦笑した
今彼に会えば絶対言われると思っていたのだ
その真田の横で影が動いた


「桜さーん!!」


赤也が手を大きく振り、桜に突進して来ようとする
彼女よりも大きな赤也がかなりのスピードで飛びついてくれば流石の桜でも困る
それを心得ているとばかりに仁王が赤也の襟首を掴んで止めた
首が絞まるのを感じながら赤也は仁王に抗議の声をあげる


「あー!!何するんスか仁王先輩!!」

「黙りんしゃい。赤也が飛びつけば桜が危ないじゃろ」

「うむ。その通りだ
退院したばかりの桜のことを考えんとはけしからん!!」


仁王に同意した真田に一喝され赤也は大人しくなった
その隙に丸井と柳、ジャッカル、柳生が近寄って来る


「よっ桜!!体調はもういいのかよぃ」

「いや。弦一郎の言う通り顔色が悪いぞ
やはり退院したのが良くなかったのではないか?」


渋い顔をする柳に桜は顔の前で手を振った


『これは別に退院とかは関係ないから
ちょっと太陽に当たって疲れただけ』

「……ならいいが」


納得したとは言い切れない柳にもう一度『大丈夫』と繰り返す
すると柳生が申し訳なさそうに言った


「先日は大勢で押し掛けて迷惑を掛けてしまいました
申し訳ありません」

「だな。うるさかったよな?」

『え?あぁ全然。むしろ嬉しかったし
別に比呂士が謝る事じゃないわよ
それにうるさいというよりは楽しかったしね』


朗らかに笑う桜の表情は無理をしているようには見えない
柳生とジャッカルは安心したように笑った


「俺らも楽しかったぜぃ!
久し振りに桜とゆっくり話せたし」

「まぁ、心配していた分元気そうで安心したっていうか」

「そうだな。お前の顔が見れて良かったという方が強いか」

『フフッ。ありがとうね』


自分はこんなにも想われている
それが分かって本当に嬉しかったのだ
思うままに動こうと決めたから特に
その想いが自分の糧だから

桜は真田達にも笑顔を向けた


『弦一郎も赤也も雅治もありがとうね』

「元気になったみたいでよかったっス!!」


真田に凹まされていた赤也は、桜の満面の笑みに目を輝かせた
一方仁王と真田は真面目な顔をして桜を見下した



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