頂を目指す二ノ姫V

□王者と女王
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「じゃが、真田の言う通りまだ顔色がよくない様じゃの」

「ああ。無理をしてはならんとあれほど言ったであろう桜」

『別に無理なんてしてないし、それに今休憩してるのよ?
本当ならシングルス3なの』


それを聞いて赤也は驚いたような顔をした
キョトンと小首を傾げて桜を見る


「え?まだシングルス3なんスか?」

『………そっちが速過ぎるのよ
1試合20分かかってないんじゃないの?』

「ま、どいつもあんま手ごたえ無かったよな」

「普段あまりダブルスをせん真田と柳で勝てたぐらいじゃからの」


丸井と仁王の相手を小馬鹿にしている発言に桜は目尻を下げる
余裕な彼らの言動は仕方ない事でもある
王者であるプライドと、実力は本物なのだから

すると丸井が頭の後ろで腕を組みしみじみと言った


「しっかし、桜が退院したんなら決勝には青学が上がって来るのか〜」

『…まだ決まって無いけど…』

「冗談言うんじゃなか」


仁王が真顔で返し、柳生が深く頷いた


「桜さんが帰ってきたことで青学の士気は格段に上がったでしょう
間違いはありません」

『そんな過大評価されても困るかな
それに私はそんな大層なものじゃないわよ
全て、皆の練習の賜物』


フッと息をつく桜を真田は見下す
そして不敵な笑みを張り付けた


「なんにせよ、俺達は負ける気は無い
幸村との誓いのため、立海の無敗での全国三連覇のため
追って来るものは徹底的に叩きつぶす
容赦はせんぞ、桜」


彼の言動はプライドそのものだ

"追って来る"

それは自分たちが前にいることが当たり前だということだ
確かに自分たち、いや彼らは追うものになるだろう
でも、追い抜く覚悟でいるのだから桜が言うことは唯一つ


『…望むところよ
戦うのは私じゃないし、私が言えることなんてない
だけど彼らが精一杯闘うところを見ているわ
勿論、貴方たちのもね』


見つめ合い笑い合う桜と真田
真田は桜の返答に満足そうに口を引き上げた


「楽しみにしているぞ、桜」

「……ではな」

「今度ケーキ屋さん一緒に行こうぜ!」

「あぁ!!丸井先輩抜け駆け!!
俺もゲーセン行きましょう桜さん!」

「なら俺はカラオケかの。桜の歌を聴きたいナリ」

「体調には気をつけてくださいね」

「またな」


騒がしく離れて行く立海
彼らを静かな目で見送った桜は、温くなった缶を握り締めた
水滴が腕を流れるが気にしない
彼らを取り巻くものが、桜には分かる

常人では分かりえない、特異の気





『(………強くなってる……霊圧…ッ)』





彼からは感じないが、他の6人からは痛いほど感じる
虚を呼び寄せる、その濃度の高い特殊な能力
世界を越えて縛る歪な因果の楔

唇を噛み締め、桜は目を細めた
その表情には、余裕はなかった





『早急に手を……打たないと…………』





手遅れになる前に…














おまけ

『それで、これはどういうことかしら?』


桜が仁王立つ前にいるのは海堂
その額から血が流れている
栞は桜の背後であちゃあと頬を掻いた


『なんで薫そんな怪我してるの』

「……あの………それは」


海堂はシングルス3、六角のテニス部1年部長、葵剣太郎との試合の最中
ボールを追い勢い余ってポールに激突したのだ
そしてそのまま試合を続行した
それを聞いた桜はこめかみを指で押した
シンと静まり返る周囲を気にせず、カッと目を見開く


『また無茶したわね!お莫迦者!!』

「………すいません」





関東大会準決勝青学VS六角


青学勝利――決勝へとコマを進めた



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