頂を目指す二ノ姫V

□邂逅
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音を立ててドアが開けばそこには予想通り彼がいた


「すまん幸村。待たせたな」

「真田」

「む………なぜ桜が此処に?」

『うーんと、診察に?』


訝る真田に説明をして桜は他の皆の所在を聞く
真田はああ、と口を開いた


「病室で幸村のお母さまにお会いしてな
柳生と仁王が手伝いをしている
丸井は飲み物を買って来ると言って、柳は電話をしに行った
ジャッカルと赤也はこれから来る」

『そう。じゃあ一応全員来るのね』

「大体皆一緒に来てくれるよ」

『そうなの』

「たまに真田だけとか、蓮二だけとかになるけどね」


桜はふーんと言うと真田の持つ、彼には不釣り合いなそれを見た
それが似合うのは丸井か、もしくは赤也か


『お見舞い?』

「ん?ああそうだ
柳生から、ここのケーキは幸村も好きと言っていたと聞いたのでな」

「その通りだよ。よく覚えてたな柳生」

『フフ。抜かりは無いわね。本当』


クスクス笑う桜にうん、と頷いて真田からケーキの箱を受け取る
真田は一度桜を見ると、思い直したように幸村に言う


「幸村…関東もいよいよ決勝のみだ
このまま全国まで無敗で突き進む!」

『(相変わらずねぇ弦一郎)』


決勝の対戦相手である青学のマネージャーがいる前で勝利宣言
流石としか言いようがない


「約束を破るのは性に合わん
桜には悪いが全国3連覇…
お前抜きでも行けるいいチームだ」


それを訊いて幸村が安心したような顔をして桜は口を閉ざした
今部外者である自分が発言する時ではないだろう
しかし幸村自身が桜に向かってちょっと意地悪く笑ってみせた


「いいのかい?こんなこと言わせてるけど?」

『………そうね』


本来は口を挟むことではないのだろう
ましてや桜は決勝の対戦相手だ
だが幸村はどうやらそれを望んでいるらしいので、真っ直ぐな目を向ける


『恐らく殆どの予想では立海勝利でしょう
青学との差を見れば一目瞭然
でも、彼らの頑張りを間近で見てきた私は彼らの勝利を見届けるわ』

「そうこなくちゃ。桜との対戦本当に楽しみにしてたんだ」

「ああ。俺達は一切の油断など無くお前達を迎え撃ち、
そして叩き潰す」


王者の威厳
そして病床の幸村のための誓い
それが分かるから、こちらも真剣に向き直る
ほんの少しのいい加減さも許されないのだ
そうして一時視線を合わせていると、外が俄にうるさくなった
次いで勢いよくドアを開けられる


「弦一郎っトラブル発生だ!
今赤也の通ってるテニスクラブから電話があった!!」

「どうした」

『赤也が何かしたの?』

「ああ。桜もいたのか。理由は後で訊こう。それより」


普段から冷静な柳が焦っていることが事態の深刻さを伺わせる
柳の報告に真田の眉間にも盛大にしわが寄った
桜も困ったように口を尖らせる

いわく、赤也がテニスクラブで中学生と試合をしているらしい
それがただの試合ならば柳に連絡がいくことはなかった
だが赤也は、その中学生に対しラフプレーをしているとのことだ
執拗に身体を狙い、ボールを当てているという

桜は目を吊り上げた
言ってしまえば赤也のプレーは前から攻撃的だとは思っていた
マナーも悪くなるし、ラフプレーもする時はあった
しかし、いつの間に身体に執拗に狙うようになったのだろう


「…実は、この間の準決勝での不動峰戦でな」

『(…それって…もしかしてリョーマが見たかもしれないやつかな…)』


アップに行って、一人で帰ってきたリョーマはひどく真剣な顔をしていた
もしかしたらその試合を見たからか


「ともかく、テニスクラブに行かねばな」

「ああ」

「このケーキくってもええ?」

「フフ…いいよ」

「行くぞ丸井っ!!」


真田の持ってきたケーキを食べたそうにする丸井
それを一喝し、真田達は走り出そうとした
桜は真田に声を掛ける



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