頂を目指す二ノ姫V

□邂逅
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「蓮二。頼む」

「ああ」


真田は柳を呼び、彼にリョーマを任せた
コートの中心に立っている赤也に視線を向ける
その時外から慌ててジャッカルが入ってきた


「さ、真田っ!!」


呼ばれた真田は入ってきたジャッカルに向き直る


「す、すまねぇ…」


ジャッカルはそう謝罪した
すると間髪いれずに真田がジャッカルの頬を裏手ではたいた
桜が口を挟む隙も無かったジャッカルは勢い余ってポールまで吹っ飛ばされる


「ジャッカル…お前が付いて居ながら」


それを見て桜は真田の帽子の上から頭を叩いた
大した威力ではないが、真田の頭を叩く強者に周囲が固まる
およそ中学生には見えない彼の容姿を遠巻きに見ていたギャラリーも唖然とした


「………桜…」


叩かれた当人である真田は鋭い目で桜を睨みつけるように見下す
しかし普通なら震えあがる眼光も物ともせず、桜は腰に手を当てて真田を窘めた


『危ないでしょう
もしジャッカルがポールに当たったらどうするの』

「…フム。正論だな」


確かに真田の鉄拳によりジャッカルは吹っ飛ばされた
そのジャッカルの横にはポールがあるので、ポールに当たる確率はあった
かなりの威力で吹っ飛ばされポールに当たれば危険なことは事実だ


『いい?貴方のそれがルールなら部外者である私は何も言わない
だけどそれでも怪我させるようじゃ駄目よ!
危ないことはしない!時と場合と場所をよく見なさいな!』

「それは………ああ…………すまない。その通りだな」


非が自分にあることは火を見るより明らかだ
そう思って真田は桜に言った
真田だってチームメイトを怪我させたい訳ではない
桜は息を吐いてジャッカルに掌を向ける


『私じゃなくてジャッカルに謝らないと
ただでさえジャッカルは髪が無いんだから、頭を守るものが無いのよ!』

「そうだよな。ハゲだもんな!」

「……庇われてんだかけなされてんだか……
つーかブン太は桜がせっかく遠まわしに言ったことを直球で言うな!!」


笑顔で言う丸井に噛みつくように叫んだジャッカル
彼の前に真田が手を差し出した
その様子は少しへこんでいるようで、普段の彼からは想像もできない


「すまなかったな、ジャッカル」

「あ、いや。もとはと言えば俺が悪かったんだ。すまねぇ、真田」


その様子を見て満足した桜は、柳に任せっぱなしだったリョーマに近寄る


『ありがとう蓮二。リョーマを』

「…いくら体が小さいとは言っても女のお前では少し重いだろう
このままで構わない」

『でも………大丈夫よ。支えてるだけだから』


すると真田が赤也の傍に寄るのが見えた
桜も視線を向けて、そして驚いた
得点板の結果が示しているものに





「赤也っ!!」





何度呼びかけても反応しない赤也にしびれを切らして叫ぶ真田も気が付いた
試合の結果が彼にとって許しがたいものだということに

越前の名前の横には数字が6
そして切原の横には数字の4がある
それが意味するものとはつまり



「……………負けちまいました」



小さくそう言う赤也に真田は渾身の力を込めて制裁を下した
頬を赤くする赤也を見て柳が桜を見下す


「すまない桜」

『ええ。ありがとう。行って』


リョーマを受け取り、桜は赤也のもとに向かう柳たちを目で追う
彼らは赤也の前に仁王立った
そして先輩として、王者としての威厳を見せつけるように言う


「切原君…反省したまえ」

「ウチら立海大附属の成すべきは全国3連覇!けどな」

「負けはいけないな」

「プリッ」

「負けてはならんのだ!」


そう言う真田の脳裏には病床に伏せる仲間の姿が映る





「たとえ草試合だろうとそれが立海大附属だ!!」





桜はその宣言を聞いて表情を歪めた
そして所在無さげに佇むジャッカルに向かって訊いた
ずり落ちそうになるリョーマを抱え直す


『ねぇジャッカル
どうしてリョーマ、こんなふうになっちゃったの?』

「……………それは……俺が聞きてぇ
お前の後輩はなんなんだ!」


目を細めるジャッカルに、桜はそれ以上何も言えなかった



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