頂を目指す二ノ姫V

□邂逅
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六角戦から数日後
青学レギュラーは同じく準決勝での立海対不動峰の試合のビデオを鑑賞した
そして圧倒的な立海の強さを目の当たりにした

地区予選で青学を苦しめた不動峰
それを容易く破る立海
その強さに触発され、彼らは気迫とともに練習に打ち込んでいた
しかし、そこにいつものように仕事に従事する桜の姿は無い
それに気付き桃城はキョロキョロと見回した


「あ、大石先輩!桜先輩はどうしたんスか?」

「桜なら、何でも医者に紹介されて神奈川の病院に行ったらしいよ
この間顔色悪かったから病院に行ったら渋い顔されたらしくて
それでまた入院しない代わりに診察だけでも受けて来なさいって言われたらしい」

「それじゃ、今日は桜先輩来ないんスか」


すると横で聞いていたスミレが声を張り上げた


「ああ。明日からまたビシバシ来るだろうし、しっかり練習しとくんだよ!!」


スミレの喝に青学はより一層の練習に励んだ

























そしてその桜は、丁寧に頭を下げて部屋から出た
中にいた先生から「無理しない様にね」と声がかかる
桜は咄嗟に無理だと思った
しかしそれを表情に出さないように笑って『はい』と返して歩き出す

最近お世話になっている主治医から医者を紹介されたのは昨日だ
腕の良い先生だから診察を受けて来るようにとお達しを受けた

しかし診察を受けたはいいが健康体とのこと
それは分かりすぎていた結果だ
今までも散々検査をしてきたが、それで分かるはずもない理由なのだから
自分のことは自分が一番良く知っている
考えるだけ無駄なのだ

しかし凄い剣幕で診察だけでも受けて来いと言われてしまえば行くしかない
まさか本当のことを話す訳にはいかないから


『………ホント、面倒ね……』


鞄を抱え直してすれ違う看護師に挨拶をする
その道すがらふと思い立った


『(そういえば、ここって金井総合病院…
……精市が入院したのもここだったはず…
お見舞いに行こうかしら………)』



「桜!!」



考え込んだ桜の背後から驚いたような声がかかった
その懐かしい声に桜は急いで振り向く



『精市!!』



そこにいたのは、藍色の緩やかな髪の儚げな少年
しかしそのテニスの強さは強大である立海テニス部部長の幸村精市だった
桜は目を瞠る幸村と同じように驚いて駆け寄った


『やっぱり、入院したのはここだったのね』

「そうだけど……なんで桜が神奈川に?
俺のお見舞い…という感じでは無いよね」


首を傾げる幸村の手を取って質問には答えずに訊いた
キョロキョロと首をめぐらせる


『その前にまずどこか座れる所に行きましょう
立ったままは辛いでしょ』

「ありがと桜
それなら屋上に行こうよ
今日は天気がいいし俺も気分がいい
それにもうすぐ真田たちが来る」

『そう。なら行きましょう屋上。道案内よろしくね』

「フフ。任されました。こっちだよ」


桜が掴んだ手を逆に掴み返し、幸村が桜を引っ張る形で歩き出した

そうして着いた屋上のベンチに腰掛け、一息つく
幸村はそれで、と口を開いた


「さっきの質問の答えは?」

『えっとね、私が倒れて検査入院したって話は聞いてる?』

「ああ。真田からね
俺も心配してたんだ。もう平気なのかい?」

『元々原因が分からないからねぇ
検査入院も形式的に受けただけだし
ただ、ここに腕の良い先生がいるからって言われてね
一度診察を受けて来なさいって紹介状を書いてもらったわけ』


するとああ、と幸村は納得したように頷いた
そして困ったように眉尻を下げる


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