頂を目指す二ノ姫V

□天才
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『(……試合の結果は見えない
例え結末を突きつけられていたとしても
だからこそ、彼らが輝くこの瞬間を目に焼き付けなきゃ)』


ギュッと拳を握り締めて、桜は堂々とする2人の背中と
そして真田に喝を入れられてコートにやってきた彼らを見た
桃城と海堂の相手は丸井とジャッカルだ
ネットを挟んで、彼らは相対する
すると桃城と海堂の手首に視線をやった丸井が笑った


「なんだよ。揃いのミサンガ付けてんの?」

「……そうっスけど、なんか文句でもあるんスか?」


不機嫌そうに桃城が返すと、丸井はさも面白そうに笑う


「いや?ただ気になっただけだよぃ」

「………これ、桜先輩に編んでもらったんですよね」


加えて「レギュラーは全員付けている」と言うと丸井とジャッカルの目つきが変わった
桃城はニヤッと笑って見せつけるように手首を振る


「そりゃ桜先輩から貰ったとあっちゃあ全員付けますよ
なんせ桜先輩ですから」

「………まぁあいつは青学のマネだからな」

「……ああ。普通だろ」


殊更強調する桃城に丸井とジャッカルはこめかみを震わせる
海堂はそれを見て鼻で笑った


「普通のことをしてもらうことがどれほどありがたいことか…
アンタらは知らないんだな」


するとジャッカルと丸井が表情を一変させてニヤリと笑った


「あ〜。ま、別にいいぜ?
桜にはマネみたいなこととか、コーチもしてもらったし」

「!!??」

「それに俺らもタオル貰ったしな〜
今でも大事に使ってるぜぃ」

「んだと!!」

『(何を競ってるのあの子たちは…………)』


しょうもないことで白熱している彼らに桜は顔を手で覆い隠した
ほんのりと羞恥で頬が赤く染まっている
大石と河村が慰めるように桜の肩を叩いた

何時まで経っても終わらない舌戦に、ついに審判が叫んだ


「君達!試合を開始しなさい!」

「………まったく…たるんどる」


丸井とジャッカルを睨みつけ、低い声を発した真田に桜も同意した
そしてようやく落ち着いたのか桃城と海堂は肩を宥める

2人と同じく静かになったジャッカルは表情を一変
今までの朗らかさとは正反対の険しい目つきで口を開いた


「そういえばお前らんトコの1年。何なんだアリャ?」


その問いに今までとは全く違う雰囲気を感じ取って桃城も目つきを変える
そもそもこのタイミングで言われる意味が分からない


「どーいう事っスか?そこんとこ詳しく…」

「まぁシクヨロ
せっかくだから俺の天才的妙技たっぷり見て帰れよ」


桃城の言葉を遮り、丸井が強引にピースサインを作って遅い挨拶をした
明らかな邪魔に桃城は眉間にしわを寄せる


「(……昨日の桜先輩といい……越前に何かあんのか?)」


しかしそれとは別に桃城には気になることが出来ていた
ミサンガを指摘されて観察していた彼らの手首
先程から気になっているそれは、まるで自分たちを侮っていると言わんばかりだ


「ところで悪いんスけど…


二人共その両腕のパワーリスト


外して貰えませんかね?」


すると丸井はガムを膨らませて挑発的に桃城を見た





「外させてみろい」





『あ〜あ。さすがブン太ってところかしらね
しっかりと煽ってくれちゃって』


「《ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 立海サービスプレイ!!》」



ついに始まったダブルス2
桃城と海堂は互いに勝利のために動きだす
サーブはジャッカルだ



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