頂を目指す二ノ姫V

□天才
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ファイヤ――ッ!!



「(この試合。主導権を握るには……奇襲だ!!)」


桃城は放たれたサーブをバックハンドで打ち返す
その強烈な打球は凄まじい速さで前衛にいた丸井に向かって行くが


ジャックナイフかよ!?

「ったく避けんな!」


本来なら前衛が拾うボールは、後衛のジャッカルが走り込んで打ち返した
桜はジャッカルのそのでたらめな守備範囲に舌を巻く


『(避けたブン太もだけど、拾うジャッカルも相当ね…)』


桃城も負けじと打ち返すがそれは浅かった
しかしミスではなく、アイコンタクトで意志の疎通ができていた
何より桃城と海堂の目には闘志が浮かんでいる


「(奇襲を成功させる!その為には―――)」

「桃ちゃん先輩ポーチに出た!?でも早すぎるっ
あれじゃ左サイドガラ開きだよっ!!」


堀尾の言う通り、丸井が拾って左サイドに打たれる
そしてそれは桃城の思惑通りだった


「(よし。ブチかましてやれ!!――海堂!!)」

「桃城は囮だぁ――――っ!!見ろ。海堂がまわり込んでるぞ!?」


見ていた忍足と宍戸も身を乗り出させる


「ジャックナイフによるポーチは…」

「海堂にブーメランスネイクを打たせる布石か!」


ざわめく会場。その中で桜だけが苦い顔をしていた
ボールを打ったのが誰なのか、分かっているから


『(……見るのは久しぶりね…………)』


ボールはネットに当たった
しかもただ当たっただけでは無かった
驚愕に目を見開く桃城の前で、ボールがネットの上を滑る
珍しく起きていたジローが目を輝かせた


「で、出た。妙技……」





綱渡り…





ボールはある程度ネットを進んだところで青学のコートにゆっくりと落ちていった
桃城は目の前で起きたことに呆気に取られている





どう。天才的?





『(流石…………ボレーのスペシャリスト……)』


思わず下唇を噛み締めた





















その後も立て続けにポイントを、ゲームを取られていく


「これももらった!」


余裕の表情でボールを拾った丸井に桜も息を詰める


「妙技…鉄柱当て」


「《ゲーム立海 3−0!!》」



ポールの先端に当たったボールはやはり青学コートに落ちる
これで3ゲーム連取されてしまった
乾と大石も固い表情だ


「奇襲に失敗し完全に主導権を握られてしまったな」

「精神的ショックも大きい。そしてそれが焦りにも繋がる……」

『桃……薫………』


すると背後から堀尾の悔しそうな声が聞こえてきた



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