頂を目指す二ノ姫V

□天才
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「常ー勝ーっ立海大!!」

「レッツゴーレッツゴー立海っ!!」

「一発決めてやれっ」

「オーッ」


空気を震わせる声援に桜は感心したように呟いた


『氷帝には負けるけど、立海も凄い応援よねえ』


観客の応援だけでなく、応援団やチアリーダーもいて熱が入っている
立海のテニス部の学校での位置が良く分かる
さらに他校の見学も多く、その殆どが立海目当てで桜は目尻を下げた

すると、隣から自分の名前を呼ぶ声がした


「桜」

『弦一郎』


顧問の代わりにベンチに座るらしい真田が桜を見ていた
周りは皇帝と渾名される真田が女子生徒の名前を呼んだ事に驚いていた
青学は桜が彼の名前を呼んだことに驚いている
レギュラーだけは桜が立海にも度々足を運んでいたことは知っていた
その為大して驚くことは無かった
桜はジッと自分を見つめてくる真田に首を傾げつつ近寄った


『何?』

「……体調は平気なのか」


小さく聞いてくる真田に桜はふわりと笑って頷いた
すると表情を緩めた真田が桜に言った


「ならば桜。お前にベンチに座ってもらいたい」

『!!』


真田の願いに桜よりもむしろギャラリーがざわめいた
真田はスミレに向かって決然と言う


「不躾なお願いだとは思いますが彼女に譲っていただきたい
俺達は桜と戦うのを心待ちにしていたので」


俺達、というその言葉に様々な想いが込められている気がした
そしてこの間の言葉通り、真田の真剣な挑戦状だった
それを感じ取ってか、スミレがニヤッと笑った


「元々そのつもりだったよ
ここ一番の勝負ところじゃ。桜。頼んだよ」

『…はい!』


桜は笑って頷き、真田と向き直った
手を出され、自分の手も差し出す


『よろしくね、弦一郎』

「ああ。こちらこそよろしく頼む」


手を離してベンチに戻る真田
桜は己の手に視線を落とした

テニスに打ち込んだ者の掌

マメで固くなった大きな手

彼の手にある確かな努力の形にお腹の底から何かが湧きあがる
浮かされるような高揚感


『…ついに始まるのね………』


まるで神聖な場所のように見えたベンチに、桜は深くお辞儀した
そしてゆっくりと腰を下ろす
不意に顔に影がさし、目の前に佇む彼らににっこりと笑った


『さぁ……出番よ2人とも』





「はい!」





「見ててください桜先輩!」





海堂と桃城はそう言ってコートを見た
桃城は隣のライバルに軽口を叩く


「ビビってんじゃねぇーぞ海堂…
桜先輩にいいとこ見せんだからな」

「キサマこそ桜先輩の前でヘボるなよ桃城…」





「「行くか!」」





レギュラーで2人だけの2年生
そして入部当初からのライバル
互いに意識し合い切磋琢磨でここまでやってきた
そんな関係の2人の試合にワクワクが止まらない



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