頂を目指す二ノ姫V

□紳士と詐欺師
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一方菊丸は仁王の動きに顔を顰めた


「(こいつさっきからジャマだなぁ)」

『ブラインドになって後衛の動きを見せないつもりね……
(でも…それだけ?)』


訝る桜だが、菊丸は菊丸印のステップを使い、仁王の裏をかく


「さあ見ぃーえた」





『!!英二っ』





その時、菊丸の顔面に柳生の放ったボールが激突した


「え、英二…」


地面に仰向けに倒れ込んだ菊丸に大石は呆然とし
そして弾かれたように駆け寄った






「英二ぃ――っ!!」






すかさず救急車が呼ばれた
桜はその間、菊丸の横に膝を突き彼の様子を見ていた


「……桜。英二は」

『………多分だけど、脳震盪かな
でも頭を強く打ってるかもしれないし…』


言葉を濁していると、担架が運ばれてきた
救急隊員が菊丸を担架に乗せて言った


「軽い脳震盪ですね
大事には至りませんがまあ一応病院へ…」


すると担架の横に立った仁王が菊丸を見下す
その表情は読み取れない



「残念…無念…また……来週」


「キサマ。わざと英二にっ!?」

『やめなさい秀一郎』

「だって桜っ…」

『やめなさいっ!!』

「…っ」


仁王に掴みかかった大石に桜は鋭い声で制止した
周りは桜の険を含んだ声に驚いて動きを止めた


『ねぇ…雅治』


静かに口を開いた桜の瞳は仁王を射抜いていた
有無を言わさない視線が仁王を貫く


『……まさか貴方が、わざとやるわけないわよね………?』

「………プリ」


静かな問いに仁王は傍目には解らない程度に冷や汗をかいた
彼女の怒りはさすがに彼も遠慮したい

そして桜も、別に怒っているわけではない
あれは事故だと思っている
ただ、彼の言動は少し不謹慎な気がしただけだ


『(………それに…なんか嫌な予感がするのよね…)』


桜は仁王から視線を外し菊丸を見た
すると担架の上で菊丸が倒立して起き上がっていた


『英二…』

「この菊丸様のアクロバティックで成敗しちゃる!」





彼が何事も無く起き上がったことで、試合は再開された
桜は柳生と仁王を一瞥してベンチへと戻った
再びネットを挟んで相対した彼ら
柳生は人のよい笑みを浮かべた


「何にしても大事に至らなくて良かったですね」

「そう。怖いのはこれから…」


仁王の言葉に大石が険しい顔つきで睨みつける
それを止めたのは菊丸だ


「大石…怒ったら奴等の思うツボだよん
ほいっ深呼吸深呼吸」

『(……秀…英二……)』


「《それでは試合を再開します》」



その言葉を合図に歓声が再び戻ってきた



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