頂を目指す二ノ姫V

□紳士と詐欺師
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ほどなく開始された試合でまたラリーが続く
仁王がまたネットについた


「もう騙されないもんねー」

「え?」


仁王が小首を傾げると後ろからボールが飛んできた
一歩間違えば仁王自身の後頭部に当たるかもしれないというのに思い切ったプレイ
桜は下唇を噛み締めた


『なんてコンビネーション…』

「危ない菊丸先輩ーっ!!」


そのままボールが菊丸に向かうが、その菊丸の姿が消えた
菊丸印のステップだ


菊…丸…ビーム!!


「《15−15!!》」



仁王は菊丸の足許を見て菊丸印のステップの攻略を試みた
動きは捉えるがこれはダブルスだ


「ご苦労さん英二!」




ドッ




「ちっ!」


大石が菊丸の後ろからボールを返す
何のサインも無しにここまでのプレイを見せる2人に感心する


「遊びすぎです仁王くん」

「プリッ」


柳生に窘められた仁王
その様子に桜は空気が変わるのだと思った
何より、柳生のあの技が出てくるかもしれない。油断は禁物だ
しかし堅い表情の桜とは裏腹に試合は快調で、1ゲーム先取した


「やっぱあの二人揃うと凄ぇ」























続いてのゲームはコートを入れ替えて柳生からのサーブだ
意気込む菊丸と大石にとにかく油断しないようにと言って送り出す
しかし胸騒ぎがしてどうにも落ち着かない


『(…………雅治は何をしでかすか分かんないからね…)』


青学コールが響く中、柳生のサーブが放たれる
返球した大石の目にポーチに出た仁王の姿が映った
激しいショットを繰り出す仁王だが菊丸に阻まれ目を見開く

大石のどこか柔らかい表情に桜も薄く笑った


『(英二は秀が試合に出られない間
周助、桃といろんなタイプの選手とダブルスを組んだ)』


そのおかげで彼は進化し、また一回り大きくなった
大石に頼り切っていた菊丸はもういなくなっていた


『(本当、頼もしくなったわね……)』


しかし、柳生の放ったその技が大石と菊丸
そして桜の表情を凍りつかせた
コートの真ん中を凄まじいスピードでボールが駆け抜ける


「で、出た…」



「柳生の一撃必殺『レーザービーム』



『…………』

真面目にやりたまえ仁王くん






これにて遊びは終わりです






重い柳生の宣告が大石と菊丸に向けられた
そしてその宣言通り、青学は押され始める
大石も菊丸もレーザービームに触れる事すら叶わない
しかし桜は違う意味で怪訝な顔をしていた


『(…………どういうこと……?)』


生憎それに答えてくれる人はいない
柳生は眼鏡の奥を悟らせず、しかし表情には柔らかい笑みを浮かべていた



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