頂を目指す二ノ姫V

□紳士と詐欺師
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「ゴールデンペア…いいテニスをしますね」


それがどこか嫌みに聞こえて仕方がない
柳生が言ったのなら本心な筈なのだが


「さすがに速いな。あのパッシングショットは…」

「とんでもねぇ。二人の間を的確に射抜いてくる」

「レーザーを意識しすぎると攻め方も消極的になってしまうしね」

『かといって、あれを意識せずにいて、なおかつ打ち返すのは難しいわ』

「かなりヤバイ状況だよ」


「《ゲーム立海 1−1!!》」



レーザーを打つ柳生は事もなげに眼鏡を押し上げる
涼しい顔をして同点に追いついてしまった
この試合展開に宍戸は口を開く


「一方的に押され始めたな
――――その上、意地になってスピードボールに応戦してどうする」


大石は全く手を変えることなく、逆に速い球を打つ
しかしレーザーには手も足も出ない


「今や完全に立海が試合を支配した」


そしてさらにもう1ゲームを取られる
だが大石と菊丸には落胆の表情は無い


「英二…思ってたより遅いよな」

「うんにゃ。お陰でだんだん目が慣れて来たよん」

『へぇ。恐いわね秀は』


緩急をつけずにあえてスピードボールで応戦していたのはこのためだったのだ
動体視力の優れている菊丸なら慣れれば打ち返すこともできるだろうと踏んで
そしてそれはその通りだった


「浮かれるのはこれを一度は返してからです





『レーザービーム』!!





「ホイッ!」



「!!」



菊丸はレーザーを打ち返した
そればかりか、怒涛の勢いでゲームを取り2−2となる
さらにオーストラリアンフォーメーションで突き放すつもりだった
しかし、ここまで来ても桜の気が晴れなかった
それもこれも先程から感じている違和感のせいだった


『(………比呂士のレーザービーム…前に見た時の方が…
速かったような気がする…
それに腕の使い方が違うような気が…………
でも、それじゃどういうことに…………!)』


嫌な予感がした
同時に懐かしい予感がした
勢いに乗る青学に心がざわめく


『………まさか』

「ウマい。完全に読んでる!!」


大石が打ち返すと同時に湧き上がる歓声。そして


「読んでようと捕れない打球があるじゃんよ
ねぇ、柳生先輩…





大石と菊丸の間を、凄まじい速さの打球が駆け抜けた





動きが止まった
太陽の光に煌めく銀髪が風になびく





「何で仁王がレーザービームを」





『………やられた…』

「やっぱ本物の『レーザービーム』はケタ違いの威力やの…






柳生






柳生が頭を乱しながらそう口にした

柳生が、柳生と言ったのだ

レーザーを打った仁王に対して

それが意味することはつまり


『………通りで遅く感じた訳だわ…』

「(じゃあ今までレーザーを打っていたのは仁王…!?)」





「プリッ」






眼鏡を外したその姿は、






まさしく「コート上の詐欺師」仁王雅治だった







→atogaki
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