頂を目指す二ノ姫V

□紳士と詐欺師
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向日は険しい表情でその得点板を見た
関東大会決勝 青学VS立海 ダブルス2


「結局6−1で王者立海か……………」

「次のダブルス1を落とすと青学はたぶんストレートで負けや」


忍足の静かな言葉が歓声に飲み込まれていった















真田は険しい表情で腕を組んで言った


「全員パワーリストを外せ。全開で行く!」


その宣言に柳や切原
そしてダブルス1に出る柳生は手首のパワーリストを外した
しかし一人従わない男が横を通り過ぎ、真田は鋭い目を向ける


「おい…仁王。聞こえなかったのか?」

「まあそう睨みなさんなって。それは自分で判断するよ」





桜は隣の様子から意識を戻し、大石と菊丸に視線を向けた
彼らは桜の前に立ち、笑って言う


「んじゃ桜!行ってくんね!」

「流れを変えてくるよ」

『ええ。いってらっしゃい』


若干顔が強張っているように見える大石の背中を見つめる
どこか緊張しているようで、そしてそれは当たり前だった


『(…秀にとって久し振りの試合だものね…)』


一敗でむかえたダブルス1に、絶対落とせない責任感
それに関都大会初戦の前に怪我をした右手首にも不安が残るのだろう
いくら完治していると言われても、本当にそうなのかは分からない
同じようなことを思っているのか、菊丸も心配そうに大石を見ていた


『英二』

「ん?」


だから桜は菊丸に声をかけて拳を差し出した
全部を言わなくても、頼もしくなった彼なら分かるはずだから


『秀一郎のこと、頼んだわよ』

「!!まっかせて!」


菊丸は同じように拳を突き出し、桜の拳に軽くぶつけた
ニッと笑い、コートに走り出す



「《只今より関東大会決勝第2試合D1
立海大 柳生・仁王VS青学 大石・菊丸の試合を行います!!》」



サーブにつく大石は険しい表情だった
様々なことが入り乱れて悪い方向へと思考が加速する
生来の心配性も相まって、どうしてもいい方向に考えられない
すると


「え、英二っ!?」


大石の目の前に菊丸がいた
驚く大石に菊丸が楽しそうに言う


「大石。後ろ後ろっ」


そこには、氷帝戦の前に大石が助けた妊婦さんがいた
彼女の隣には旦那だろう男性
そしてその腕には赤ん坊がいた


「アナタ。大石くんってあのタマゴ型の…」

『………ふふっ』

「…………こりゃタイヘン。負けられないな」


大石の表情が変わった
桜はピースサインを向けて来る菊丸に同じようにピースを返す


『(本当…いいコンビよね)』


だが、それは彼らも負けていないだろう



「《ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ
青学サービスプレイ!!》」


「さあ英二っ先手必勝だ!!」


大石はが鋭いサーブを放ち、それを難なく返す柳生
早速大石のラケットがコートを擦る


『秀の十八番』


「出たぁムーンボレー―!」


コートに迫るボールに仁王は口角をあげた


「おおっと」

「オンライン…やりますね」


ラインの上に落ちたボールをすかさず柳生が打ち返した
大石と柳生のラリーが続く



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