頂を目指す二ノ姫V
□因縁
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「《ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 乾サービスプレイ!!》」
「蓮二。この勝負…
「『勝たせて貰うよ』…と言う」
勝たせて貰うよ!」
乾の打ったサーブは凄まじい速さで柳に向かった
それを返した柳の打球も速い
しかしそれはネットに当たった
あまりの速さにボールが見えなかった者も多い
「《15−0!!》」
「パワーが付いたな、貞治」
「次…いくぞ」
続いてのサーブ
動いた柳を分析する乾の目は鋭い
「右やや低めのドライブ系ショット…角度は30°ってトコか
うむ。寸分の狂いも無い」
打ち返したと同時に動き出す
それは柳がどこに打つかを分かっているから
「左に打つ確率82%」
『(……当たってる)』
「そしてお前はドロップショットを打って勝負に出る
…がそうはさせない」
ドロップショットに反応した乾は柳の足許に容赦なく返す
柳は反応できずにボールを見送った
「《30−0!》」
「ケッ…」
最近乾と接点の多かった海堂は、彼の試合ぶりに言い放った
「…やはりブーメランスネイクを完成させる為に
俺とダブルスを組んでくれてたにすぎない
一緒にダブルスを組んでいて分かった事がある
あの人は紛れもねぇ…
シングルスプレイヤーだ!!」
桜もそれには同意せざるを得なかった
自分の動きと相手の動きの予測の方が、パートナーも加えた予測よりはるかに精度がいい
何より、あそこまで身体能力をあげて来たとなれば自分がカバーできる範囲も増えたはずだ
『(なら自分一人でやりたいわよね)』
しかし、それと同時に眉間にしわが寄る
楽観視は絶対に出来ない状況は続いているのだ
相手が柳なら尚更
そしてそれは乾も分かっているはず
「《ゲーム乾1−0!!》」
「《ゲーム乾2−0!!》」
立て続けにゲームを取った乾に青学側は安心したように試合を見つめている
大石も興奮して拳を握った
「正確さスピード共に…また一段と成長している」
「何か凄い気迫を感じるな、乾…」
「(来い、蓮二!)」
だが、桜だけは表情を緩めない
柳の表情が綻んだことに気がついたのだ
桜は知っている
乾が4年余り、柳を見続けてきたことを
それと同時に柳もまた、上へと登っていたことを
柳から語り聞いた、過去の出来事とともに
だからこそ、安直な思いは抱けない
そしてそれは逆に、身内よりも他校の方が分かっているようだった
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