頂を目指す二ノ姫V

□因縁
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真田がいないことをいいことに
赤也はコーチ用のベンチの背に腰かけ、座席に足を置いた
コートを見て生意気に笑う


「楽勝じゃないっスか?
このままチャッチャッと優勝しちゃいましょうよ」

「いや。勝ちはしているが予定より若干時間押してるぜ」


ジャッカルの言葉に赤也は口を尖らせる


「先輩達
いくら桜さんがいるからって奴等に見せ場作りすぎっスよ」


それを聞いた仁王、丸井、柳生の眉間が微かに動いた


「赤也。随分エラなったのう?」

「あででっ…」

『(何やってるのかしらあの子たちは…)』


横目で見ていた桜は彼らのやり取りに苦笑した
余裕の表れだろうか
若干呆れていると、桜の視線に気づいたらしい
丸井がガムを膨らませながら手を振ってきたので軽く返す
まぁ、のされている赤也は見ないフリだ

柳と乾はネットを挟んで向かい合った


「機は熟…





「『機は熟した』……とお前は言う」





……」


乾の言葉を遮り、柳はそう口にした
乾の言葉を先読みして言った柳に驚く1年トリオだが、乾が冷静に答える


「別に驚く事じゃ無いよ…蓮二とは昔からの知り合いでね
お互いを知りつくしている。だから…





靴紐を結び直してないかい?100%の確率でね





後ろを向いていて柳のことを見ていなかった乾がそう言った
その通り、乾の背後では柳が屈んで靴紐を直していた


「凄いよ乾先輩も!!」

「データで負けてらんないもんねっ」

「へぇ〜〜」


仁王達にボロボロにされた赤也も面白そうにその様子を見ていた
しかし背後に立つ気配に気づいて表情を固まらせた


「…あ」

「随分と偉くなったものだな」


言わずもがな後ろに居たのは席を外していた真田だ


「土足でベンチに座るとは何事だ――っ!!」

「ゲッ…真田副部長っ」

『(だからほんと何してるのよあの子たちは…)』

「…どうしたの?桜。顔が引き攣ってるけど」

『えっと……気にしないで』


不思議そうな不二にそう返すと、彼はクスッと笑って目を微かに開いた


「(……立海…か)」








「久方ぶりだな、貞治」

「4年と2か月と15日ぶりだ」

「昔の馴染みがあったところで容赦はしない」

「もちろん望むところだよ」


決然とした面持ちの乾
涼しい表情の柳
大石はコートで相対する2人に神妙な顔をした


「かつてのダブルスコンビが今度はシングルスで対決という訳か」

『ええ』


乾と柳は小学生の頃、同じテニススクールでダブルスを組んでいた
彼らはその当時、ジュニアのテニス界を牽引する存在だった


「数年たってるけどお互い相手の性格や手の内は熟知しているだろうね」


河村の言葉に桜は目を細めた
彼らの進化のスピードは目を瞠るものがある
その当時を知っているからと言って、進化が目覚ましい最近に追いついていけるか


『(…さて、どうなるかしら)』



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