頂を目指す二ノ姫V

□五分五分
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柳のボールが悉く決まる
どんなに乾が叫べども、それは容易く跳ね返される
最早勝敗は見えたも同然


「(無様だな貞治………まだ分からないのか?





自分のプレイスタイルを捨てた時点で





お前の勝ちが潰えた事に!)」





「《ゲーム柳5−4!!》」



「おお――っ。やはり王者立海大強し!!」


青学は追いこまれた
最早会場は立海優勝の雰囲気である
忍足は呟くように言った


「次のゲーム。落としたら立海の関東優勝や…」

「青学…頑張ったんスけどね」

「ちっ。最後の一球まで根性見せやがれ」


鳳も宍戸も、乾を、そして桜の後ろ姿を見つめた
コートを黙って見る彼女の背中は何とも言えない雰囲気が漂っている


「(……つーか、アイツ痩せたか?)」


宍戸は思わずそんなことを思ってしまった
先日まで入院していたのだし、そう思っても仕方がないだろう
ただ、それだけではない気がする


「(……華奢…だよな……)」


普段の彼女は雰囲気が大きくて、おおらかで
身長もそれなりにあるから小さいなんて感じた事は無い

ただ、今の彼女を表せるものは小さいという言葉だ
後ろ姿は、どこか頼りなげだ
彼女の幼馴染がいないから、そんなことを思うのか
それもあまり面白くないが


「(……ってか何余計な事考えてんだよ、激ダサ)」


思わず心の中で自分を叱咤した
























ベンチに戻ってきた乾は大量の汗を流していた
タオルを差し出せば、首にかけ、項垂れるようにベンチに座る
その右手はベンチに置いておいた柳用のノートに伸びていた


「やはりデータが無いと勝てないかい?」


後ろからスミレが言う
それに乾は答えない
桜は考えるように顎に手を置いて、乾を横目で見た





『………思い描いた通りに試合は進んでるのかしらね?』





「!!」


バッと顔をあげて驚いている乾
彼に桜はしてやったりと笑みを浮かべた


『そんな気がしたのよ。だからカマをかけてみたの』

「…………さすが“見抜く者”だ」


苦笑した乾は桜にノートを開いて差し出す
目の前のノートに困惑する桜に乾はフッと笑った


「ここ、見てくれ」

『……まさか貞治のノートを見る日が来るなんて思わなかったわ』


心底そう言えば、乾は立ち上がって口角をあげた





「俺も思わなかったよ」





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