頂を目指す二ノ姫V

□五分五分
3ページ/5ページ





コートに向かった乾を見送った彼らは険しい表情で見守る
試合した者も、これからの者も


「…負けたく無いっスね」

「絶対、アイツらに勝ちたい!!」

「絶対…!」

『(その想いはみんな一緒ね……)』


桜は拳を胸にあて、片方の手で包み込んだ

ベースラインに下がり、サーブを打つ柳はコートにボールをバウンドさせた


「このゲーム。取れば俺の勝ちだ」


息を切らせている乾に、柳はボールを掴み突き出した





「行くぞ貞治。覚悟!」





「…俺は絶対負けない」





「!」





そのやりとりに、柳は目を見開いた
このやりとりに、柳は覚えがあった

それは柳が引っ越す前
最後にダブルスパートナーであった乾と試合をした日のこと








「いくぞ貞治。覚悟!」








「(あの時と同じ…あの時も確か5ー4で)」


途中で中断してしまった試合
その時の光景が鮮明に思い浮かんできた
そして柳は信じられないことに気づく


「(違う…それだけではない。この試合展開は……まさか)」


桜もそれに気付かされた
ノートに書かれた試合展開のメモ
それは寸分違わず


『ホント…侮れないわね』

「貞治…お前ワザと…」





「続きはここからだったハズだな」





かつて中断してしまった試合
道を分ける前の、最初で最後に試合
忘れられるはずもなかった


「データを捨てただと?
捨てたどころか俺さえも忘れていた」


例え頭では忘れていたとしても


「あの時のデータ通りに俺は打たされていたと言うのか!?
あの時と全く同じゲーム展開になる様に!


あの時の決着をつけるため
4年と2か月と15日に終止符を打つ為


「だがそれもここまでだ…





蓮二。ここから先のデータは無い





決着をつける!!





返り討ちにしてやるぞ貞治っ!!





止まった時が動きだす
















遠くから試合を見ていた跡部は、遠くの地に旅立った彼に語りかける


「この試合…奇跡が起こるかもしれねーなぁ





そうだろ…手塚よ





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ