頂を目指す二ノ姫V
□五分五分
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ゲームカウント5−5
ラリー、5分以上
両者譲らぬ試合に観客は手に汗を握る
「乾先輩いったぁぁ――っ!!」
コートを滑る乾
眼鏡が吹っ飛ぶが根性でゲームをとった
柳は気迫みなぎる乾に驚くしかなかった
力の限りプレイする乾を見て眉間に力を込める
「(貞治…お前のどこにまだそんな力が残されているというんだ!)」
『(……まだまだ進化し続けるのよ。貴方たちは)』
諦めないことが力になり、未来を掴む
彼らの"上"を見つめ続けるその目が、手が、運命を乗り越える力なのだ
「(面白い。未だ発展途上中とは―――
何処まで進化し続けるのか貞治よ
だが俺とてこれで終わる訳にはいかない!)」
点の取り合いが激化する
凄まじい気迫がぶつかり合う
そしてついに、タイブレークに突入した
「頼むぜ乾先輩!」
「このままで終わる青学じゃねぇ」
「次のボクまで回してくれ乾」
「頑張れ。乾先輩っ!!」
「お、おチビ」
「(越前…)」
普段クールなリョーマまでも、声を張り上げた
そのことに大石は胸を熱くさせる
桜はただ、その時を待った
「凄い…」
「両者共2ポイントは離されない」
「《16−16!!》」
何処までも続くかのようなタイブレーク
会場のボルテージは最高潮に達していた
静かな目で見ていた跡部はずっと認めたくなかった筈の
しかし事実を口にした
彼らを挑発するように、鼓舞、するように
「ああん。俺達氷帝に勝ったんだろ青学…
易々と負けてんじゃねーぞ!」
その試合は4年越しの想いが透けていた
ずっとダブルスを組んできた2人の、シングルスでの試合
『(薫が言ってた……
貞治は紛れもないシングルスプレイヤーだと)』
それを、柳が分からない筈がなかった
ならきっと、彼は
『(貞治と試合、したかったのかしらね?)』
憶測でしかないそれに満足して、桜は己の周りにいる人々の顔を思い出す
どいつもこいつも
『(不器用ねぇ……本当、なんで私の周りは不器用が多いのかしらね)』
そして、彼らの、4年越しの試合は終わった
「《ゲームセットウォンバイ乾 7−6!!》」
それは誰にとっても大きな意味を持っていた
青学にも、立海にも
その勝敗が歴史を動かす
「負けた………のか?」
「たまたまだ」
「?」
乾はネットを挟んで相対したかつてのパートナーに一歩近づく
「勝率はお互いに50%…
次に勝つのは蓮二。お前かもしれない」
「フッ…また一つデータが増えたという訳か」
「お互いに…な」
4年越しに、彼らはネットを挟んで手を握り合った
→atogaki